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宿泊旅行統計調査2023年2月-日本人延べ宿泊者数が2ヵ月ぶりにコロナ禍前を上回るが、外国人延べ宿泊者数の回復は鈍化

経済研究部 安田 拓斗
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1.日本人延べ宿泊者数は2ヵ月ぶりにコロナ禍前の水準を上回る
2023年2月の日本人延べ宿泊者数は3,447万人泊(1月:3,344万人泊)となり、2019年同月比は0.6%(1月:同▲0.1%)と2ヵ月ぶりにプラスに転じた。1月10日以降、運用が再開された全国旅行支援の後押しを受けて日本人延べ宿泊者数は高い水準で推移している。
2023年2月の外国人延べ宿泊者数は592万人泊(1月:606万人泊)となり、2019年同月比は▲36.2%(1月:同▲34.2%)と7ヵ月ぶりにマイナス幅が拡大した。外国人延べ宿泊者数は2022年10月11日の水際対策緩和以降、急回復していたが、2023年入り後、回復のペースは鈍化している。
宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は33.6%、2019年同月差▲4.9%(1月:同▲4.7%)、リゾートホテルは51.0%、2019年同月差▲7.3%(1月:同▲8.9%)、ビジネスホテルは63.3%、2019年同月差▲12.6%(1月:同▲6.9%)、シティホテルは64.2%、2019年同月差▲14.8%(1月:同▲12.8%)、簡易宿所は18.8%、2019年同月差▲11.1%(1月:同▲7.0%)であった。2019年同月差では、リゾートホテルでマイナス幅が縮小したが、旅館、ビジネスホテル、シティホテル、簡易宿所でマイナス幅が拡大した。それ以外のタイプの宿泊施設でもマイナス幅が拡大した。
2.インバウンド需要回復のカギは中国だが、回復が遅れている
全国旅行支援は2023年1月10日以降、割引率を40%から20%へ下げて運用が延長されている。割引上限額は交通付宿泊旅行の場合は一泊5,000円、それ以外の場合は3,000円、クーポン券は平日2,000円、休日1,000円である。なお、すべての都道府県でワクチンの3回接種証明書もしくは陰性証明書の提示が要件とされている。
当初の予定では3月末までの運用予定だったが、4月以降も割引率やクーポンの付与額などの変更なしで継続することが決まった。ただし繁忙期にあたるゴールデンウイークは除外される。観光庁の見解では多くの都道府県で初夏ごろまでの実施が可能だという。引き続き全国旅行支援の後押しを受けて日本人延べ宿泊者数はコロナ禍前と同程度の水準で推移することが予想される。
しかし、外国人延べ宿泊者数の2019年同月比は、2023年2月に7ヵ月ぶりにマイナス幅が拡大した。この一因は、中国人観光客が回復していないことである。中国人観光客はコロナ禍前、外国人観光客のおよそ3分の1を占めていたが、厳格なゼロコロナ政策及び同政策解除後の感染拡大に伴う日本政府の入国規制によって回復が遅れている。規制の内容は、7日以内に中国に渡航歴のあるすべての人及び中国からの直行便で入国する人に対して、ワクチン接種の有無にかかわらず、出国前検査での陰性証明書の提出を求めるというものである。3月1日に到着時検査の対象が全員から一部の人へと緩められたが、他の国・地域からの入国に比べると厳しい規制が残ったままである。中国以外の国・地域からの訪日客数が回復する中で、訪日中国人数は足もとの2023年2月においてもコロナ禍前の5.0%(2019年同月比)と非常に低い水準となっている。
各種報道によると、日本政府は4月5日以降、中国からの入国者に対して出国前検査での陰性証明書の提示を不要にし、規制を緩和する方針のようだ。インバウンド需要回復のためには中国人観光客の回復が欠かせないため、この規制緩和の効果には期待が高まる。中国からの観光客を日本に呼び戻すことができれば、インバウンド需要は回復していくだろう。
3月13日以降、マスクの着用が個人の判断に委ねられた。また、5月8日以降、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に引き下げられる予定であり、これに合わせて水際対策が撤廃される見込みである。これらによって旅行しやすい環境や雰囲気の醸成が促進されつつあるため、日本人の国内旅行者数は引き続き高い水準で推移し、外国人旅行者数は回復していくことが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年04月03日「経済・金融フラッシュ」)
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