2023年03月08日

景気ウォッチャー調査(23年2月)~経済活動の制限緩和の進展で、飲食、サービスが大きく上昇

山下 大輔

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1.現状判断DIは大きく上昇し50超え、先行き判断DIも3か月連続の上昇で50超え

現状判断DI・先行き判断DIの推移 3月8日に内閣府が公表した2023年2月の景気ウォッチャー調査(調査期間:2月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DIは52.0と前月から3.5ポイント上昇した(4か月ぶりの上昇、4か月ぶりの50超え)。また、2~3か月先の景気の先行き判断DIは50.8と前月から1.5ポイント上昇した(3か月連続の上昇、9か月ぶりの50超え)。景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DIも49.4と前月から4.8ポイント上昇し、50に近づいた。

2月調査では、全国旅行支援等の政策効果に加え、入国制限の緩和や3月13日から新型コロナ対策としてのマスクの着用を個人の判断を基本とする政府の方針の発表などの新型コロナによる経済活動の制限の緩和が進展していることで、景況感が改善し、先行きへの悲観的な見方も薄れてきたようだ。

ただし、調査回答者からは、物価上昇による景気の冷え込みを懸念するコメントも見受けられ、景況感が大きく回復しない状況が今後しばらく続くと見込まれる。

2.景気の現状判断DI:飲食、サービスが大きく上昇

現状判断DIの内訳の推移 現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連は52.9(前月差4.3ポイント上昇、4か月ぶりの上昇、4か月ぶりの50超え)、企業動向関連は48.7(同1.9ポイント上昇、2か月連続の上昇、14か月連続の50割れ)、雇用関連は52.6(同1.6ポイント上昇、2か月連続の上昇、18か月連続の50超え)となり、全ての内訳で前月から上昇し、家計動向関連は50を超えた。
現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連の内訳では、上述の新型コロナに関する経済活動の制限緩和や、全国旅行支援等の政策効果により、飲食関連やサービス関連が大きく上昇した。小売関連は、前月差3.0ポイント上昇の51.3(2か月ぶりの上昇、9か月ぶりの50超え)、飲食関連は前月差11.3ポイント上昇の60.2(2か月連続の上昇、3か月ぶりの50超え)、サービス関連は前月差6.6ポイント上昇の56.6(4か月ぶりの上昇、6か月連続の50超え)となった。他方、住宅関連は前月差▲2.5ポイント上昇の42.0(2か月ぶりの低下、29か月連続の50割れ)であった。

<回答者の主なコメント>
  • 新型コロナウイルス感染症は終息していないが、行動制限がなくなった。さらに、3月13日からはマスク着用要件が緩和されるなど、消費者マインドが行動したり、外出したりする気持ちに向かい、活動的になっている。この消費者マインドをなくす懸念事項の1つに値上げの継続があるが、直近数か月の消費者マインドは上向きだと考える(北陸・一般レストラン)
  • 大型イベントの集客力が新型コロナウイルス感染症発生前の水準に近いところまで回復している。客単価、稼働共に上向いており、コロナ禍からの回復を実感している(北海道・観光型ホテル)
  • コロナ禍が終わってきたこともあり、地元の観光市場、全国の飲食店向け商品出荷共に好調である(東海・一般小売店)
  • 建築物価だけでなく、他の消費財やエネルギーコストの上昇も続いているため、客が住宅のような大きな投資を差し控えている(中国・設計事務所)
現状判断DI(企業動向関連)の内訳の推移 企業動向関連の内訳については、製造業(前月差1.9ポイント上昇の47.7、14か月連続の50割れ)、非製造業(前月差1.8ポイント上昇の50.2、2か月連続の上昇、9か月ぶりの50超え)ともに上昇した。回答者のコメントからは、自動車生産の回復や、人流の回復の指摘があった。

<回答者の主なコメント>
  • 自動車メーカーの半導体を中心とした部品調達不足も徐々に解消され、増産傾向となっている(南関東・輸送用機械器具製造業)
  • 絶好調ではないが、新型コロナウイルス感染症発生前に近づいている。街での人の動きが多くなっており、特に飲食店は状況が良くなっている(九州・経営コンサルタント)

3.景気の先行き判断DI:飲食、サービスが大きく上昇

先行き判断DIの内訳の推移 先行き判断DIの内訳について、家計動向関連は51.3(前月差1.9ポイント上昇、3か月連続の上昇、9か月ぶりの50超え)、企業動向関連は48.4(同▲0.7ポイント低下、2か月ぶりの低下、15か月連続の50割れ)、雇用関連は52.9(同4.0ポイント上昇、2か月連続の上昇、5か月ぶりの50超え)となった。
先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連では、小売関連、飲食関連、サービス関連、住宅関連の内訳全てが前月から上昇した。小売関連は、前月差0.7ポイント上昇の50.6(3か月連続の上昇、15か月ぶりの50超え)、飲食関連は、前月差6.7ポイント上昇の55.8(3か月連続の上昇、4か月のぶりの50超え)、サービス関連は、前月差3.3ポイント上昇の52.6(2か月連続の上昇、5か月ぶりの50超え)、住宅関連は、前月差0.3ポイント上昇の45.7(2か月連続の上昇、16か月連続の50割れ)であった。回答者のコメントからは、3月のマスク着用ルールの変更や5月に予定される新型コロナの感染症法上の分類変更を契機とした消費回復、インバウンド需要の更なる増加への期待が示され、飲食、サービスで大きく上昇した。

<回答者のコメント>
  • マスク着用の自主化に伴い化粧品需要が復活し、新型コロナウイルス感染症も5類に引き下げられることから、消費動向は活発になると予想される。また、各種イベントや旅行需要などによる消費を期待している(九州・百貨店)
  • G7広島サミットの開催や規制緩和により、海外からの渡航者数が増加する。また、マスク着用が個人の判断にゆだねられるなどの行動制限の緩和で、国内で開催されるイベントが増加するため、景気は良くなる。(中国・都市型ホテル)
  • 新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向にあるほか、中国向けの入国規制の緩和で観光客が増えるため、経済は少し良くなってくる。ただし、物価の上昇に歯止めが掛からず、消費者の所得を上げる方が早く経済が回復すると予想される。(近畿・一般レストラン)
先行き判断DI(企業動向関連)の内訳の推移 また、企業動向関連の内訳では、製造業は、前月差0.1ポイント上昇の47.8(2か月連続の上昇、15か月連続の50割れ)となる一方、非製造業は、前月差▲1.3ポイント上昇の49.1(2か月ぶりの低下、2か月ぶりの50割れ)となった。回答者のコメントからは、製造業については、現状判断と同様に、自動車生産の回復や生産コスト増を価格転嫁できていることを好感する指摘があった。

<回答者のコメント>
  • 2~3か月後も自動車メーカーの生産が好調であるため、忙しくなる(中国・輸送用機械器具製造業)
  • 為替動向が、130~140円の範囲で推移することが条件ではあるが、原料の有無、価格の上昇の許容度が増しており、業界そろって価格転嫁が確実に実施できている(四国・食料品製造業)
  • 自動車に関しても生産ライン停止により受注残を多く抱えていることから、先々の仕事は豊富にある。EV生産用の新規ライン投資等に関連して、ロボット業界の仕事も忙しい状況が続く見込みである(北関東・一般機械器具製造業)
  • 各種商材、サービスなどの値上げラッシュによる消費マインドの低下が見込まれる。また、道内企業の賃上げ動向が不透明であり、実質購買力の低下も懸念される。一方、コロナ禍でのマスク着用ルールの緩和が示されたことから、国内客及びインバウンドの一層の増加が見込まれ、観光関連での景気底上げが期待できる。(北海道・金融業)
 
 

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山下 大輔

研究・専門分野

(2023年03月08日「経済・金融フラッシュ」)

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