2023年01月12日

さくらレポート(2023年1月)~全国旅行支援を受けて非製造業は大きく改善したが、先行きへの警戒感は強い

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.景気の総括判断は、全9地域中、4地域で引き上げ、5地域で据え置き

1月12日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、景気の総括判断は、全9地域のうち4地域で引き上げ、5地域で据え置きとなった。

北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄で景気の総括判断が引き上げられた。その中でも関東甲信越と近畿は感染抑制と経済活動の両立が進んだとしている。北海道、東北、東海、中国、四国では景気の総括判断が据え置きとなったが、東海は、前回調査の「持ち直しの動きが一服している」との判断から「横ばいで推移している」と引き続き弱い動きになっている。新型コロナウイルスの新規感染者数は高い水準にあるが、全体的な持ち直しの基調は続いている。

需要項目別にみると、10月から開始された全国旅行支援の後押しを受け、個人消費の持ち直しの動きが続いている。また、高水準の企業収益を背景に設備投資も堅調に推移している。
地域経済報告

2.業況判断は改善するも、先行きへの警戒感は強い

地域別の業況判断DIと変化幅(全産業) 「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域で改善した。全国では+3ポイントの改善となった。

前回調査からの改善幅をみると、九州・沖縄が+7ポイントと大きく、次いで東北が+5ポイントとなっている。北陸、関東甲信越、中国、四国は+3ポイント、北海道、東海、近畿は+2ポイントと小幅な改善に留まった。前回調査に引き続いて全体的に改善に向かっている。

先行き(2023年3月)の景況感については、全9地域で悪化を見込んでいる。今回調査では+2ポイントの改善幅だった北海道だが、先行きの低下幅は▲13ポイントと最も大きくなっており、先行きへの警戒感が強い。

全体として、景況感は改善している。観光需要喚起策として全国旅行支援が10月から開始され、人出が回復したことが要因の一つだと考えられる。ただし、海外経済の急減速、世界的なインフレ、円安による輸入物価の上昇など景気の下振れリスクは残っていることから、先行きは多くの地域で警戒感が強く、今後も先行きを楽観視できない状況が続くだろう。

3.製造業の業況判断は5地域で改善も、地域ごとにばらつき

地域別の業況判断DIと変化幅(製造業) 製造業の業況判断DIは、全9地域中5地域で改善、2地域で横ばい、2地域で悪化した。全国では+2ポイントの改善となった。

業種別には、改善した業種と悪化した業種があり、ばらつきがある。今回調査では繊維、食料品が全体的に改善した。一方、石油・石炭製品、木材・木製品、化学は多くの地域で悪化した。

地域別には、北海道が前回調査からの改善幅が+8ポイントと最大となった。特に電気機械(+29ポイント)と、窯業・土石製品(+14ポイント)の改善幅が大きかった。一方、北陸は前回調査から▲5ポイントの悪化となった。特に石油・石炭製品(▲33ポイント)の悪化幅が大きかったことが全体を押し下げた。

先行きについては、全9地域中4地域で改善、5地域で悪化を見込んでいる。全国では▲4ポイントの悪化を見込んでいる。業種別では、鉄鋼がすべての地域で悪化が見込まれているほか、木材・木製品、非鉄金属も多くの地域で悪化が見込まれている。

地域別には、北陸では+2ポイントの改善を見込んでいる。非鉄金属(+29ポイント)、化学(+24ポイント)は大幅な改善が見込まれるが、木材・木製品(▲25ポイント)、金属製品(▲25ポイント)は大幅な悪化が見込まれており、業種によってばらつきがある。北海道では▲9ポイントの悪化を見込んでいる。全体的に悪化する業種が多く、中でも木材・木製品(▲27ポイント)と電気機械(▲15ポイント)で大幅な悪化が見込まれている。
なお、日銀短観12月調査では、2022年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が130.55円と、前回調査の想定(125.34円)よりはやや円安方向に修正されたものの、足もとの実勢(132円台)と比べて円高の水準を想定している。為替が現在の水準を維持し続ければ、これは製造業の景況感の上振れ要因となる。
製造業の改善・悪化幅(前回→今回)/製造業の改善・悪化幅(今回→先行き)

4.非製造業の業況判断は改善傾向だが、先行きは悪化を見込む

地域別の業況判断DIと変化幅(非製造業) 非製造業の業況判断DIは8地域で改善、1地域で横ばいとなった。全国では+5ポイントの改善となった。

業種別では、全国旅行支援が10月から開始されたことを受けて、宿泊・飲食サービスが大きく改善した。一方で対事業所サービスは悪化した地域が多かった。

地域別には、北陸は宿泊・飲食サービス(+67ポイント)、電気ガス(+30ポイント)
が大幅に改善したことから、前回調査からの改善幅が+10ポイントと最大になった。次いで東北、九州・沖縄では、前回調査からの改善幅が+9ポイントと北陸に続いた。東北は宿泊・飲食サービス(+49ポイント)、情報通信(+18ポイント)が、九州・沖縄は宿泊・飲食サービス(+34ポイント)、対個人サービス(+18ポイント)が大幅に改善したことで全体を押し上げた。一方、北海道は、情報通信(▲12ポイント)、対事業所サービス(▲12ポイント)が全体を押し下げ、横ばいとなった。

先行きについては、全9地域で悪化を見込んでいる。全国では▲7ポイントの悪化を見込んでいる。北海道は、対個人サービス(+23ポイント)が大幅な改善を見込んでいるものの、物品賃貸(▲31ポイント)、卸売(▲24ポイント)、宿泊・飲食サービス(▲21ポイント)などが大幅な悪化を見込んでおり、全体を押し下げたことで、全体は▲13ポイントと悪化を見込んでいる。
今回調査で非製造業が改善したのは、10月から開始された全国旅行支援の影響で、宿泊・飲食サービスが大きく改善し、全体を押し上げたためだ。しかし、先行きは新型コロナウイルスの感染再拡大による人出の減少や、物価上昇に伴う国内消費の低迷など下振れリスクが残っていることから、大幅な悪化を見込んでいる。
非製造業の改善・悪化幅(前回→今回)/非製造業の改善・悪化幅(今回→先行き)
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

(2023年01月12日「経済・金融フラッシュ」)

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