2022年12月27日

雇用関連統計22年11月-宿泊・飲食サービス業の新規求人数がコロナ前の水準に近づく

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント低下の2.5%

完全失業率と就業者の推移 総務省が12月27日に公表した労働力調査によると、22年11月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.5%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。

労働力人口が前月から▲27万人の減少となる中、就業者が前月から▲23万人の減少となったため、失業者は前月から▲5万人減の173万人(いずれも季節調整値)となった。

失業率は低下したものの、10月に続き労働市場から退出した人が増えたこと(非労働力化の進展)が失業者の減少をもたらしている。就業者、雇用者は2ヵ月連続で減少しており、内容を伴った失業率の低下とはいえない。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差28万人増(10月:同50万人増)と4ヵ月連続で増加したが、増加幅は前月から大きく縮小した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年差19万人増(10月:同22万人増)と5ヵ月連続、製造業が前年差16万人増(10月:同9万人増)と3ヵ月連続で増加し、卸売・小売業が前年差0万人(10月:同▲7万人減)と15ヵ月ぶりに減少を脱したが、医療・福祉が前年差1万人(10月:同21万人増)と増加幅が大きく縮小した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ40万人増(10月:同51万人増)と9ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差10万人増(10月:17万人増)と2ヵ月連続の増加、非正規の職員・従業員数が前年差30万人増(10月:同34万人増)と10ヵ月連続の増加となった。ただし、コロナ前の19年11月と比べると、正規の職員・従業員が41万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲64万人減となっている。

2.宿泊・飲食サービス業の新規求人数はコロナ前に近づく

厚生労働省が12月27日に公表した一般職業紹介状況によると、22年11月の有効求人倍率は前月から横ばいの1.35倍(QUICK集計・事前予想:1.36倍、当社予想も1.36倍)となった。有効求人数が前月比▲1.3%と2ヵ月連続で減少、有効求職者数が前月比▲1.5%と5ヵ月連続で減少した。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.09ポイント上昇の2.42倍と2ヵ月連続で改善した。新規求人倍率の水準はコロナ前の水準(2019年平均の2.42倍)を回復した。

新規求人数は前年比8.7%(10月:同7.9%)と20ヵ月連続で増加した。産業別には、卸売・小売業が前年比13.0%(10月:同11.7%)と7ヵ月連続で前年比二桁の高い伸びとなったほか、水際対策の緩和や全国旅行支援を背景に、宿泊・飲食サービス業が前年比21.2%の大幅増加となった。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
失業率は低下したものの、非労働力化の進展がその主因であり、内容は悪い。一方、有効求人倍率が前月から横ばいにとどまる一方、先行指標である新規求人倍率は2ヵ月連続で大きく上昇しており、依然として企業の求人意欲は非常に強い。特に、コロナ禍の影響を強く受けた宿泊・飲食サービス業は、水際対策の緩和や全国旅行支援を受けて、新規求人数が大幅に増加しており、22年11月の19年11月比は▲2.4%とコロナ前の水準に近づいている。

雇用調整助成金の特例措置は10月に上限が引き下げられ、12月以降は通常制度に戻っている(一定の経過措置あり)が、このことが失業者の増加につながるリスクは低いだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年12月27日「経済・金融フラッシュ」)

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