2022年11月30日

鉱工業生産22年10月-10-12月期は減産の可能性が高まる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.10月の生産は市場予想を下回る

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が11月30日に公表した鉱工業指数によると、22年10月の鉱工業生産指数は前月比▲2.6%(9月:同▲1.7%)と2ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.4%、当社予想は同▲1.2%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲1.1%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲0.8%と5ヵ月ぶりの低下となった。

10月の生産を業種別に見ると、半導体不足などの供給制約の影響で不安定な動きが続く自動車は前月比5.6%(9月:同▲12.4%)と持ち直したが、半導体製造装置、フラットパネル等の生産用機械が前月比▲5.4%と大きく落ち込んだほか、ITサイクルの悪化から電子部品・デバイスが前月比▲4.1%の低下となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は22年7-9月期の前期比13.1%の後、10月は前月比▲4.0%となった。一方、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は22年7-9月期の前期比▲2.5%の後、10月は前月比0.2%となった。資本財(除く輸送機械)は大きく落ち込んだが、7-9月期の高い伸びの反動もあり、11、12月の予測指数がそれぞれ前月比6.3%、3.6%の高い伸びとなっていることから、回復基調が途切れたとは言えない。
財別の出荷動向 GDP統計の設備投資は、22年4-6月期の前期比2.4%に続き、7-9月期も同1.5%と高めの伸びとなった。高水準の企業収益を背景に設備投資は持ち直しの動きが続いており、10-12月期も増加する可能性が高い。

消費財出荷指数は22年7-9月期の前期比4.9%の後、10月は前月比2.8%となった。耐久消費財が前月比▲2.3%(7-9月期:前期比12.1%)非耐久消費財が前月比0.5%(7-9月期:前期比▲0.1%)となった。

22年7-9月期のGDP統計の民間消費は、物価高や新型コロナウイルスの感染拡大という逆風を受けながらも、特別な行動制限がなかったことから、前期比0.3%の増加となった。10-12月期の民間消費は全国旅行支援による押し上げ効果などから、伸びを高めることが予想される。

2.10-12月期は減産の可能性が高まる

製造工業生産予測指数は、22年11月が前月比3.3%、12月が同2.4%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(10月)、予測修正率(11月)はそれぞれ▲5.4%、▲3.0%であった。特に、ITサイクル悪化の影響から、電子部品は10月の実現率が▲12.1%、11月の予測修正率が▲11.4%の大幅マイナスとなった。

予測指数を業種別にみると、輸送機械は11月が前月比▲2.3%、12月が同7.8%となっているが、今回の予測調査は11/10時点の生産計画であり、その後大手自動車メーカーから生産計画の下方修正が発表されている。実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
22年10月の予測指数を11、12月の予測指数で先延ばしすると、22年10-12月期の生産は前期比0.3%となるが、実際の生産が予測指数から大きく下振れる傾向があることを考慮すれば、2四半期ぶりの減産となる可能性が高まった。

個人消費などの国内需要が底堅い動きとなっていることが下支えとなるものの、欧米を中心とした海外経済の悪化を背景に輸出が低迷する可能性が高いこと、供給制約が完全に解消されるまでには時間を要することなどから、生産は当面弱い動きが続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年11月30日「経済・金融フラッシュ」)

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