2022年12月27日

宿泊旅行統計調査2022年11月~日本人延べ宿泊者数は2ヵ月連続でコロナ前を上回る

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1. 日本人延べ宿泊者数の2019年同月比は2ヵ月連続でプラス

観光庁が12月26日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2022年11月の延べ宿泊者数は4,570万人泊(10月:4,427万人泊)となった。前年同月比は23.7%(10月:同38.0%)となり、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、▲8.0%(10月:同▲11.6%)と3ヵ月連続でマイナス幅が縮小した。

2022年11月の日本人延べ宿泊者数は4,170万人泊(10月:4,215万人泊)となり、2019年同月比は2.7%(10月:同5.9%)と2ヵ月連続でコロナ前の水準を上回った。10月11日から開始された全国旅行支援を受けて、国内旅行者数が順調に回復している。

2022年11月の外国人延べ宿泊者数は400万人泊(10月:212万人泊)となり、2019年同月比は▲55.8%(10月:同▲79.4%)と4ヵ月連続でマイナス幅が縮小した。2020年4月以降、外国人延べ宿泊者数は▲90%台で推移を続けていたが、10月11日から水際対策が緩和されたことで、大きく回復している。
延べ宿泊者数の推移(2019年同月比)/宿泊施設タイプ別客室稼働率
2022年11月の客室稼働率は全体で55.8%(10月:同53.8%)となり、2019年同月差では▲9.8%(10月:同▲9.8%)となった。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は41.4%、2019年同月差▲0.5%(10月:同▲0.1%)、リゾートホテルは52.5%、2019年同月差▲5.0%(10月:同▲5.6%)、ビジネスホテルは65.1%、2019年同月差▲14.8%(10月:同▲13.3%)、シティホテルは68.7%、2019年同月差▲13.8%(10月:同▲20.4%)、簡易宿所は24.3%、2019年同月差▲10.0%(10月:同▲8.2%)であった。2019年同月差では、旅館、ビジネスホテル、簡易宿所でマイナス幅が拡大しているが、リゾートホテル、シティホテルではマイナス幅が縮小している。

2. 今後も国内外の観光需要は回復する見通し

10月の全国旅行支援開始と水際対策緩和を受けて、11月の日本人延べ宿泊者数の2019年同月比は10月に引き続きプラスで推移し、外国人延べ宿泊者数も大きく回復した。

全国旅行支援は東京都以外の道府県では10月11日、東京都では10月20日に開始された。割引率は40%で、割引上限額は交通付宿泊旅行の場合は一泊8,000円、それ以外の場合は5,000円となっている。さらにその地域で使用可能なクーポン券を受け取ることができ、クーポン券は観光需要分散のため、平日が3,000円、休日が1,000円となっている。なお、すべての都道府県でワクチンの3回接種証明書もしくは陰性証明書の提示が要件とされている。この全国旅行支援は12月27日(12月28日チェックアウト分)まで実施される。

2023年1月10日からは割引率を見直して全国旅行支援が延長される。割引率は20%へ引き下げられ、それに伴い、割引上限額は交通付宿泊旅行の場合は一泊5,000円、それ以外の場合は3,000円へ、クーポン券は平日2,000円、休日1,000円へと縮小される。
全国旅行支援
10月以降、日本人延べ宿泊者数がコロナ前の水準を上回っていることから、全国旅行支援が積極的に活用されていることが推測される。今後も全国旅行支援の活用により、日本人延べ宿泊者数は高い水準となることが見込まれる。ただし、新型コロナウイルス感染症の新規陽性者は10月半ば以降増加傾向にあり、感染がさらに拡大すれば運用が中止される可能性がある点には注意が必要だ。

11月は外国人延べ宿泊者数の回復が顕著だった。入国に際しては、有効なワクチン3回接種証明書または出国前72時間以内の陰性証明書の提出が求められるが、10月11日以降、個人旅行の解禁、短期滞在のビザ免除再開、一日あたりの入国者数の上限撤廃など水際対策が緩和されたことに加え、為替レートは円安の水準となっており、訪日外国人旅行者数は大幅に回復している。

コロナ前、外国人観光客のおよそ3分の1を占めていた中国は厳しい水際対策を継続しているため、中国人観光客数は回復していない。しかし、中国政府は各航空会社に課していた国際線の便数制限を解除し、国際的な感染状況を見ながら、中国人の海外旅行を段階的に回復させていくなど水際対策の緩和を12月26日に発表した。これにより中国人観光客数が回復すれば、インバウンド需要の回復が加速することが見込まれる。

11月の訪日外国人旅行者数は中国を除けばコロナ前の半分程度にまで回復した。特に韓国、ベトナム、シンガポールなどアジアの旅行者数が回復している。為替レートは足もとでは円高の動きとなっているがコロナ前と比べると依然として円安の水準となっている。この円安のメリットを受けて、外国人の観光需要は回復していくと予想される。
 
 

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安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2022年12月27日「経済・金融フラッシュ」)

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