2022年12月09日

景気ウォッチャー調査(22年11月)~感染者数増加や値上げの影響で、景況感は悪化

山下 大輔

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1.現状判断DI、先行き判断DIともに前月から低下

現状判断DI・先行き判断DIの推移 12月8日に内閣府が公表した2022年11月の景気ウォッチャー調査(調査期間:11月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DIは48.1と前月から▲1.8ポイント低下した(4か月ぶりの低下、5か月連続の50割れ)。また、2~3か月先の景気の先行き判断DIは45.1と前月から▲1.3ポイント低下した(3か月連続の低下、6か月連続の50割れ)。

前月(10月)までは、飲食、サービスの景況感改善を主要因として、現状判断DIは回復を続けてきたが、今月(11月)調査では、主に飲食の景況感悪化やサービスの景況感改善の減速により、現状判断DIは4か月ぶりに低下に転じた。インバウンド需要の増加や全国旅行支援等の政策効果というプラス材料はありつつも、感染者数が再び増加しつつあることやそれに伴う自粛の動きに加え、原材料価格の高騰による経営への影響や物価高騰による消費者へ影響への懸念が低下の要因である。先行き判断DIも、感染第8波や値上げへの懸念から、3か月連続で低下した。この傾向は今後もしばらく継続する可能性が高いだろう。

2.景気の現状判断DI:飲食、サービスが大きく悪化

現状判断DIの内訳の推移 現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連は48.3(前月差▲3.1ポイント下落、4か月ぶりの低下、2か月ぶりの50割れ)、企業動向関連は47.3(同1.2ポイント上昇、2か月連続の改善、6か月連続の50割れ)、雇用関連は48.3(同0.5ポイント上昇、3か月ぶりの改善、2か月連続の50割れ)となり、企業動向関連、雇用関連は前月から上昇したが、家計動向関連の低下により、現状判断DIは、全体として低下した。
現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連の低下は、主に飲食関連やサービス関連が前月から大きく低下したことによるものだ。飲食関連は、前月差▲13.1ポイント低下の47.9(4か月ぶりの低下、3か月ぶりの50割れ)と前月から大きく低下した。前月差で10ポイントを超える低下は今年7月(▲10.8ポイント)以来だ。サービス関連も前月差▲4.2ポイント低下の52.6(4か月ぶりの低下、3か月連続の50超え)となった。ただし、サービス関連は依然として50を超えており、景況感の回復は続いているものの、回復テンポに減速がみられる。その他、小売関連も前月から低下した(前月差▲2.2ポイント低下の46.6、4か月ぶりの低下、6か月連続の50割れ)。

<回答者の主なコメント>
  • 10月頃までは客がかなり来店していたが、11月に入り、新型コロナウイルスの感染状況が大分拡大していることから、キャンセルが増えており、とても困っている(北海道・スナック)
  • 輸入品の洋酒のみならず、ガソリン代を始め全ての仕入れ食材が値上がりしている(東海・一般レストラン)
  • 全国旅行支援の効果に加え、インバウンドも増加しており、急激に稼働率、単価が上がっている(近畿・都市型ホテル)
  • ロシアのウクライナ侵攻は、あらゆる物資の調達に影響し、物価上昇を加速させ、また、物資不足に陥っている。北朝鮮の度重なるミサイル発射、米国の今後など、あらゆるところで先行き不透明である。新型コロナウイルスの感染拡大防止もどこを目指しているのか分からず、不安である(南関東・ゴルフ場)

3.景気の先行き判断DI:飲食が大きく悪化

先行き判断DIの内訳の推移 先行き判断DIの内訳について、家計動向関連は44.3(前月差▲2.9ポイント低下、2か月連続の低下、2か月連続の50割れ)、企業動向関連は46.3(同1.6ポイント上昇、2か月ぶりの上昇、6か月連続の50割れ)、雇用関連は47.7(同2.9ポイント上昇、2か月ぶりの上昇、3か月連続の50割れ)となり、家計動向関連の低下により、全体の先行き判断DIは低下した。

家計動向関連では、飲食関連で顕著な悪化となった。飲食関連は、前月差▲10.8ポイント低下の43.0(2か月連続の低下、2か月連続の50割れ)であった。その他、小売関連は、前月差▲2.9ポイント低下の44.4(3か月連続の低下、11か月連続の50割れ)、サービス関連は、前月差▲1.1ポイント低下の45.5(2か月連続の低下、2か月連続の50割れ)となった。賃金が大きく上がらない中での物価上昇への懸念に加え、感染第8波への懸念がその背景にある。
先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 <回答者のコメント>
  • 新型コロナウイルス感染症も物価の上昇もいつ落ち着くかが分からず、当地の景気回復はみえてこない(東北・一般レストラン)
  • 国政における混乱はもちろんのこと、分かりにくい形で負担が増えるという話も出ているが、これがボディーブローのように効いてくる。出し惜しみせず思い切った財政出動や公共事業投資などを行わなければ、日本経済は間違いなく地盤沈下していく気がする。これから冬季に入り、ヨーロッパ諸国はエネルギー不足に伴う停電などで経済活動が鈍り、いろいろな分野に影響が出てくるのではないか(南関東・一般レストラン)
  • 物価の上昇により消費者の生活防衛意識は更に強まっている。財布のひもは固くなり、消費は冷え込むとみている(北陸・百貨店)
  • 宿泊は全国旅行支援もあり堅調であるが、人手不足により受注制限を考えなければ営業できなくなる恐れもある。年明け後の延長も示されたが、新型コロナウイルスの感染拡大により再び行動制限が発出されたり、また、発出されなくても自粛が目立つようになったりする可能性もあり不透明である(四国・都市型ホテル)
 
 

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山下 大輔

研究・専門分野

(2022年12月09日「経済・金融フラッシュ」)

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