2023年04月10日

景気ウォッチャー調査(23年3月)~マスク着用ルールの見直しで景況感が更に上向く

山下 大輔

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1.現状判断DI、先行き判断DIともに上昇し、50超を継続

現状判断DI・先行き判断DIの推移 4月10日に内閣府が公表した2023年3月の景気ウォッチャー調査(調査期間:3月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DIは53.3と前月から1.3ポイント上昇した(2か月連続の上昇、2か月連続の50超え)。また、2~3か月先の景気の先行き判断DIは54.1と前月から3.3ポイント上昇した(4か月連続の上昇、2か月連続の50超え)。景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DIも50.0と前月から0.6ポイント上昇し、50に達した。

3月調査では、物価上昇による景気の冷え込みを懸念する回答者のコメントも見受けられるものの、全体として、全国旅行支援等の政策効果やマスク着用ルールの緩和などの新型コロナによる経済活動の制限の緩和の進展が景況感の改善を促進していることが示された。

2.景気の現状判断DI:企業動向関連が大きく上昇

現状判断DIの内訳の推移 現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連は53.7(前月差0.8ポイント上昇、2か月連続の上昇、2か月連続の50超え)、企業動向関連は51.1(同2.4ポイント上昇、3か月連続の上昇、15か月ぶりの50超え)、雇用関連は55.6(同3.0ポイント上昇、3か月連続の上昇、14か月連続の50超え)となり、全ての内訳で前月から上昇し、企業動向関連は50を超えた。
現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連の内訳では、上述の新型コロナに関する経済活動の制限緩和や、全国旅行支援等の政策効果により、飲食関連やサービス関連が前月に引き続き上昇した。飲食関連は前月差2.3ポイント上昇の62.5(3か月連続の上昇、2か月連続の50超え)、サービス関連は前月差1.3ポイント上昇の57.9(2か月連続の上昇、7か月連続の50超え)となった。他方、小売関連は、前月差から横ばいの51.3(2か月連続の50超え)となった。飲食関連やサービス関連と同様に、マスク着用ルールの見直しなどを受けて来客数が増加するなどの好材料がありつつも、物価高の影響で相殺された。住宅関連は前月下落した反動もあり、前月差3.9ポイント上昇の45.9(2か月ぶりの上昇、30か月連続の50割れ)であった。

<回答者の主なコメント>
  • マスク着用の緩和、年度末による歓送迎会の開催、桜の早期開花で3月後半にかけて来客数の戻りが顕著になってきた。また、若干だが遅番の来客数に戻りもみられるが、客1組当たりは少人数のままで、アフターコロナが鮮明になっている(東海・高級レストラン)
  • 3月13日よりマスク着用の考え方を見直すという政府の発表と、全国旅行支援が重なり、今月はかなり回復している。特に、宿泊部門は著しいものがある。一方で、まだ会社の宴会は戻っておらず、3~4月の歓送迎会が伸び悩んでいる、あるいはキャンセルになっている。これらが解消されれば、5月8日の新型コロナウイルス感染症の5類への移行に向けて良くなっていくと期待している(南関東・都市型ホテル)
  • コロナ禍関連の行動制限がなくなったほか、マスク着用が個人の判断となり、外出する機会が増えている。それに伴い、婦人服や化粧品の売上が拡大し、来客数も好調に推移している。また、外国人観光客による来店も増加が続くなど、インバウンド効果も好調に推移している(近畿・百貨店)
  • 春の行楽シーズンや春休みに入り、人の活動は前年以上に活発になってきた。ただし、食料品や日用品の値上げが止まらず、消費者の生活防衛意識が高まっているため、売上の現状は厳しい(近畿・スーパー)
企業動向関連の内訳は、製造業(前月差2.7ポイント上昇の50.4、3か月連続の上昇、15か月ぶりの50超え)、非製造業(前月差1.8ポイント上昇の52.0、3か月連続の上昇、2か月連続の50超え)ともに上昇した。マスク着用ルールの見直しなどの経済活動の制限緩和やそれに伴う消費の好調さが波及し、景況感を上向かせた。

<回答者の主なコメント>
  • イベントでの売上が好調である。また、ギフト商材も少し売れてきている(南関東・食料品製造業)
  • 行動制限がなくなり、心理的にも新型コロナウイルス感染症発生前の状況に戻りつつある。広告出稿も旅行関連や新生活、入学対応などを中心に増えており、広告業界はやや改善方向で推移している(東北・広告業協会)

3.景気の先行き判断DI:飲食、サービスが大きく上昇

先行き判断DIの内訳の推移 先行き判断DIの内訳について、家計動向関連は54.3(前月差3.0ポイント上昇、4か月連続の上昇、2か月連続の50超え)、企業動向関連は52.9(同4.5ポイント上昇、2か月ぶりの上昇、16か月ぶりの50超え)、雇用関連は55.4(同2.5ポイント上昇、3か月連続の上昇、2か月連続の50超え)となった。
先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連では、内訳全てが前月から上昇したが、飲食関連やサービス関連はとりわけ大きく上昇した。飲食関連は、前月差4.9ポイント上昇の60.7(4か月連続の上昇、2か月連続の50超え)、サービス関連は、前月差5.3ポイント上昇の57.9(3か月連続の上昇、2か月連続の50超え)であった。また、小売関連は、前月差1.8ポイント上昇の52.4(4か月連続の上昇、2か月連続の50超え)、住宅関連は、前月差1.0ポイント上昇の46.7(3か月連続の上昇、17か月連続の50割れ)であった。回答者のコメントからは、3月のマスク着用ルールの変更や5月に予定される新型コロナの感染症法上の分類変更を契機とした消費回復、インバウンド需要の更なる増加への期待が示された。

<回答者のコメント>
  • 食材の度重なる値上がり、人件費の増加、慢性的な人手不足などで厳しい経営状況が続くが、新型コロナウイルス感染症に関する行動規制が緩やかになったことで、ゴールデンウィーク以降、外出客が増加し、売上も増加する(中国・一般レストラン)
  • 国内や海外の移動についての忌避感が今後ますます縮小することになる。今後については、全国旅行支援の終了に伴う一定数の旅行需要の反動減など、ネガティブな要因も見込まれるものの、団体旅行を中心に旅行需要の増加が期待できることから、景気はやや上向きになる(北海道・旅行代理店)
  • 以前のインバウンド需要の中心だった中国人観光客がいなくても売上が伸びているため、今後中国人観光客の入国が増えるようになると、もっと売上が伸びると考える(北陸・商店街)
先行き判断DI(企業動向関連)の内訳の推移 また、企業動向関連の内訳では、製造業は、前月差4.9ポイント上昇の52.7(3か月連続の上昇、16か月ぶりの50超え)となり、非製造業は、前月差4.5ポイント上昇の53.6(2か月ぶりの上昇、2か月ぶりの50超え)となった。現状判断と同様に、マスク着用ルールの見直しなどの経済活動の更なる制限緩和とそれに伴う消費の好調さが波及している状況だ。

<回答者のコメント>
  • 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に移行することでイベント等が復活し、それに伴って印刷物等が増えることが期待できる(東北・出版・印刷・同関連産業)
  • 外食向け製品の出荷量が徐々に増加傾向にあること、観光業への発注も増加傾向にあることから、景気は回復傾向にある(四国・食料品製造業)
  • 新型コロナウイルスの感染対策としての規制、制限がほぼなくなったことで、経済を正常に回そうとするマインドが強まることになり、土木、建築共に受注が順調に進むことが見込まれる。ただし、秋まではエネルギー価格や資材価格の上昇が続くとみられるため、民間工事の受注や採算性に悪影響を及ぼさないか気掛かりである(北海道・建設業)
  • マスク着用ルールが見直され、声出し応援が解禁になり、エンタメ業界などで夏のイベントが前年より多くなる(南関東・広告代理店)
 
 

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山下 大輔

研究・専門分野

(2023年04月10日「経済・金融フラッシュ」)

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