2023年04月03日

日銀短観(3月調査)~景況感は製造業で明確に悪化したが非製造業は堅調、設備投資計画は強め、値上げ圧力は続く見込み

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  • 3月短観は製造業の景況感悪化が目立つ結果となった。大企業製造業では原燃料価格が高止まるなか、海外需要の落ち込みや世界的な半導体市場の悪化などが響き、5四半期連続で景況感が悪化した。一方、大企業非製造業でも原燃料価格の高止まりは重荷となったが、政策的な追い風もあって経済活動再開の流れが続いたことを受け、堅調な景況感が維持された。
     
  • 先行きの景況感はバラツキがあるものの、総じて大幅な改善は見込まれていない。製造業では中国経済回復や供給制約緩和への期待が景況感改善に繋がったものの、欧米の景気減速などが重荷になったとみられ、小幅な改善に留まっている。非製造業では人手不足感や原燃料価格の高止まり、物価高による消費減退への懸念が強いとみられ、景況感の悪化が見込まれている。
     
  • 2022年度の設備投資計画(全規模)は前年比11.4%増と、前年度から大幅に持ち直すとの計画が維持されているが、前回調査からの修正幅は例年よりも大きい。海外経済の減速などの事業環境悪化を受けて、投資を先送りする動きが例年より現れたとみられる。一方、今回から新たに調査・公表された2023年度の設備投資計画(全規模)は、2022年度見込み比で3.9%増となった。例年3月調査の段階では前年割れとなる傾向が強いためプラス圏になるのは稀で、しかも3.9%増という伸び率は3月調査としては過去最大にあたる。2022年度計画からの先送り分が計画を押し上げている面があるとはいえ、それでも強めの計画と言える。投資余力の改善、脱炭素・DX・省力化に向けた投資需要の存在などが堅調な計画の背景になっているとみられる。
     
  • 注目された仕入価格判断DI・販売価格判断DIについては、足元で仕入価格上昇の勢いが鈍化し、販売価格への転嫁の勢いもやや和らいだ。先行きも概ね仕入価格上昇の勢いが和らぐことが想定されているが、引き続き仕入・販売価格の上昇圧力の高い状況が続くことが想定されている。企業の中長期的な物価見通しにも上振れの動きがみられる。
     

 
景況感は製造業で明確に下落・非製造業で僅かに改善(大企業)/主な業種別の業況判断DI(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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