2023年03月23日

日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは5ポイント下落の2と予想、設備投資は先送り傾向が強めに

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 3月短観では、原燃料価格が高止まるなか、海外需要の落ち込みや世界的な半導体市場の悪化が響き、大企業製造業の景況感悪化が顕著になると予想。一方、非製造業の景況感については、水際対策の緩和などの政策的な追い風もあって経済活動再開の流れが続いたことを受けて、相対的に堅調を維持すると見込んでいる。
     
  2. 先行きの景況感についても大幅な改善は見込み難い。製造業では中国経済回復への期待により景況感の改善が見込まれるものの、利上げに伴う欧米の景気減速や円高進行懸念が改善を抑制する形となりそうだ。非製造業ではインバウンド需要の回復やコロナの5類移行に伴う経済活動の正常化期待が景況感の支えになるものの、強まる人手不足感や物価高による消費減退への警戒感がやや優勢となるだろう。
     
  3. 22年度の設備投資計画(全規模)は、前年比12.0%増と前年度から大幅に持ち直すとの計画が維持されると予想しているが、例年よりも下方修正が大きめになると見ている。資材価格が高止まりしているうえ、海外経済の減速などを受けて製造業を中心に投資を先送りする動きが強まっていると考えられるためだ。一方、今回が初回となる23年度の設備投資計画は、22年度計画からの先送り分に加え、投資余力の改善や脱炭素・DX・省力化に向けた投資需要の存在も見込まれるため、例年よりも高めの伸びが予想される。
     
  4. 今回の短観で特に注目されるのは設備投資計画だ。予想される製造業の景況感悪化がどの程度、計画に波及するのかが、日本経済の回復の持続性や下振れリスクに対する耐久力を左右する。また、前回に続いて仕入・販売価格判断DIの重要性も高い。企業による値上げが続くなか、先行きにかけて、どの程度の仕入価格上昇と販売価格引き上げが見込まれているのかという点は、当面の物価上昇の持続性を計るうえでの重要な手がかりとなる。

 
(図表1)日銀短観業況判断DIの予測表
■目次

3月短観予測:製造業の景況感悪化が顕著に、先行きはやや改善へ
  ・大企業非製造業の景況感は相対的に堅調
  ・設備投資計画は依然高い伸びを示すが、下方修正幅は大きめに
  ・注目ポイント:設備投資計画、仕入・販売価格判断DI
  ・緩和修正のハードルを下げる材料になるか

(2023年03月23日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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