2022年07月01日

日銀短観(6月調査)~大企業製造業の景況感は2期連続で悪化、記録的なコスト高を受けて価格転嫁が続く見込み

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 6月短観では、供給制約の深刻化や原材料価格高騰などが逆風となり、大企業製造業の業況判断DIが9と前回から5ポイント下落した。景況感の悪化は2期連続となる。一方、大企業非製造業では、コロナ感染縮小に伴う人出の回復が追い風となり、業況判断DIが上昇した。
     
  2. 先行きの景況感は総じて慎重な見方が示された。製造業では供給制約の緩和、非製造業では人流のさらなる回復への期待がそれぞれ景況感の追い風になっていると見られる。ただし、ウクライナ情勢や世界的なインフレ、中国の都市封鎖再導入の可能性など海外経済を巡る不透明感が強いほか、原材料価格のさらなる上昇に対する懸念も根強いとみられる。
     
  3. 2021年度の設備投資額(全規模全産業)は、前年度比0.8%減と前回調査から下方修正された。一方、2022年度の設備投資計画(同)は、前年度比14.1%増と大幅に上方修正されている。例年6月調査では計画の具体化や(比較対象である)前年度実績の下方修正に伴って伸び率が上方修正される傾向が強い。今回は、既往の収益回復や経済活動の再開、供給制約緩和への期待を受けて伸び率の上方修正幅が例年を大きく上回り、伸び率の水準としても非常に高くなっている。2021年度実績の下方修正がやや大きめになり、先送り分が多かったことも22年度計画の伸び率嵩上げに繋がっているが、それを差し引いても強めと言える。このように、2022年度の設備投資計画は勢いのある内容と評価できるものの、供給制約や原材料高、世界的なコロナ・インフレの行方など先行きの不透明感は強い。これらの動向次第で今後設備投資計画が下方修正されるリスクもあるだけに、計画の実現性については不確実性の高さが否めない。
     
  4. 今回特に注目された仕入価格判断DIは大幅に上昇し、歴史的な水準に達している。販売価格判断DIも大幅に上昇したものの、企業の採算は厳しい状況が続いている。従って、採算の改善に向けて今後も販売価格の引き上げを続けるとの見通しが示されている。
製造業は悪化の一方、非製造業は改善(大企業)/主な業種別の業況判断DI(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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