2021年07月01日

日銀短観(6月調査)~製造業の景況感は大幅改善の一方、非製造業は伸び悩み、先行きの見方は総じて慎重

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 6月短観では、海外経済回復に伴う輸出の増加や円安基調の継続などを受けて、注目度の高い大企業製造業の業況判断DIが14と9ポイント上昇し、景況感の順調な回復が続いていることが確認された。一方、インバウンド需要が消滅したままで外需を取り込めないばかりか、3度目の緊急事態宣言発令が重荷となった大企業非製造業の業況判断DIは1と2ポイントの上昇に留まった。製造業と非製造業の格差がさらに鮮明になっている。
     
  2. 先行きの景況感は総じて横ばい圏に留まった。内外でのワクチン接種拡大に伴う経済活動回復が期待されているものの、一方で感染力の強いコロナ変異株の流行に対する警戒感もあり、楽観的にはなれていないようだ。
     
  3. 2021年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比7.1%増へ上方修正された。例年、6月調査では計画の具体化に伴って上方修正される傾向が極めて強いうえ、企業収益が持ち直して投資余力が回復したことや、生産の回復を受けて設備の過剰感が緩和していることが上方修正の理由になったと考えられる。前年度比7.1%増という伸び率は6月調査としては2018年度(7.9%)に次ぐ過去2番目の高水準にあたる。今回、設備投資計画が上方修正されたことで企業の設備投資意欲の持ち直しが確認されたものの伸び率の高さについては、前年度の設備投資が減少して比較のハードルが下がったうえ、今年度に繰り越された計画が押し上げに繋がった面も相当あったとみられる。また、設備投資計画の金額は2019年度実績を未だ2.0%下回っている。従って、企業の慎重姿勢が未だ残っていることが垣間見える結果と言えるだろう。
     
  4. 企業の資金繰り判断DIはやや改善したものの、民間金融機関による実質無利子無担保融資の受付が3月末で終了したうえ、一部ではコロナ関連融資の返済が始まっているとみられる。業況の厳しい対面サービス業を中心に厳しい資金繰りが続いている可能性が高い。
業況判断DIの製造業・非製造業間格差がさらに拡大(大企業)/主な業種の業況判断DI(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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