- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険計理 >
- 5回連続成功までに何回かかる?-練習が “地獄の猛特訓” に変貌するとき
5回連続成功までに何回かかる?-練習が “地獄の猛特訓” に変貌するとき

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
◇ 野球の守備練習-「5回連続でエラーをしなかったら終了」の場合、平均して、何本ノックを受ける?
守備が上手い選手と下手な選手がいるだろうから、一概には言えない。そこで、ある選手が1回のノックでエラーをしない確率をp、エラーをする確率を (1-p) (pは、0~1の値) として、この選手の平均ノック回数を考えてみる。
pが0.5の場合、つまり、1回のノックでエラーをしないかするかが半分ずつの場合、先ほどのコイン投げと同じことになる。その計算結果から、5回続けてエラーをしないまでに、平均して、62回のノックが必要となる。
では、pが0.5以外の場合はどうか? コイン投げと同様に、連立方程式を解いて、計算することになる。
いまノックを受けていて、k回続けてエラーをしていない状態だとしよう。この状態から、平均して、あとzk回ノックを受けたら、5回続けてエラーをしない状態に至って練習が終了する。kの範囲は、0~4だ。
このとき、つぎの5つの関係式を作ることができる。
z0 = 1 + p × z1 + (1-p) × z0 … (11)
z1 = 1 + p × z2 + (1-p) × z0 … (12)
z2 = 1 + p × z3 + (1-p) × z0 … (13)
z3 = 1 + p × z4 + (1-p) × z0 … (14)
z4 = 1 + (1-p) × z0 … (15)
確率として、0.5の代わりに、pや(1-p) を用いた式となっている。(11)~(15)を解くと、次の通りとなる。
z0 = {(1/p)5 - 1} / (1-p)
z1 = {(1/p)5 - 1/p} / (1-p)
z2 = {(1/p)5 - (1/p)2} / (1-p)
z3 = {(1/p)5 - (1/p)3} / (1-p)
z4 = {(1/p)5 - (1/p)4} / (1-p)
一応、連立方程式は解けたが、何とも、おどろおどろしい感じの結果となり実感がわいてこない。そこで、実際に、pに値を代入して、計算をしてみる。
問題は、この練習法を、守備が下手な選手に用いる場合だ。1回のノックでエラーをしない確率が0.3の場合、平均回数は500回を超える。この確率が0.2の場合は、3900回を超える。こうなると、ノックを受ける選手にとっても、ノックをするコーチにとっても、まさに“地獄の猛特訓”となる。
注意すべきなのは、この計算では、1回1回のノックでエラーをしない事象(またはエラーをする 事象)は独立である、と暗黙のうちに仮定している点だ。実際には、何回もノックを受けるうちに、守備が上手くなっていき、5回続けてエラーをしないまでの平均回数は減っていくかもしれない。
だが、逆のことも考えられる。ノックを繰り返すうちに、疲労がたまったり、集中力が低下していったりして、エラーをしやすくなるというケースだ。また、1度エラーをすると、2度も3度もエラーをしてしまう、いわゆる「エラー癖がつく」ということもあるかもしれない。こうなると、平均して、この表の計算結果よりも、さらに多くのノックの回数が必要となる。
「5回連続で成功したら、今日の練習は、お仕舞いにしましょう」― こういう練習法は、プレーヤーの技術をよく考えて行わないと大変なことになる。
コーチは、選手、プレーヤーの力量を把握したうえで、適切な指導を行うべきと言えるだろう。
(参考文献)
“Mathematical Puzzles” Peter Winkler (CRC Press, 2021)
「コイン投げで4回連続の表」坂井公 (パズルの国のアリス, SCIENTIFIC AMERICAN日本版・日経サイエンスホームページ)
https://www.nikkei-science.com/page/magazine/alice/202108/question.html
https://www.nikkei-science.com/page/magazine/alice/202108/answer.html
(2023年03月20日「研究員の眼」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/28 | リスクアバースの原因-やり直しがきかないとリスクはとれない | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/22 | 審査の差の定量化-審査のブレはどれくらい? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/15 | 患者数:入院は減少、外来は増加-2023年の「患者調査」にコロナ禍の影響はどうあらわれたか? | 篠原 拓也 | 基礎研レター |
2025/04/08 | センチネル効果の活用-監視されていると行動が改善する? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【5回連続成功までに何回かかる?-練習が “地獄の猛特訓” に変貌するとき】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
5回連続成功までに何回かかる?-練習が “地獄の猛特訓” に変貌するときのレポート Topへ