コラム
2019年07月12日

クラス替えの確率-ずっと同じクラスとなるクラスメートは何人いるか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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どの学校にも、クラスが設けられている。児童や生徒は、クラス単位で授業を受けることが多い。小学生や中学生にとって、自分がどのクラスに入るかは、重大な問題だ。たいてい、仲のよい友だちは同じクラスの中でできるからだ。このことは、学校内だけにとどまらない。家に帰った後も、クラスの仲間どうしで遊ぶことが多い。小学生や中学生にとって、学校のクラスは、家族に次いで重要な人間集団といっても過言ではないだろう。
 
小学校や中学校では、年度初めによくクラス替えをする。クラスを組みなおすことで、児童や生徒たちの学校生活への取り組み意欲を高めたり、友だちの幅を広げさせたりする目的があるのだろう。
 
小学校でクラス替えをする場合、先生たちは、さまざまなことを考慮するようだ。クラス間で学力水準に差がつかないよう、児童を均等に分散させる。リーダータイプやムードメーカータイプなどの児童を各クラスに振り分ける。運動会のリレーのために、足の速い児童が特定のクラスに固まらないようにする。合唱会で伴奏ができるよう、クラス内にピアノのできる児童を1人は入れる……などなど。
 
ただ、クラス替えについてなにか確率的な計算をしようというときには、そういう条件を考えていくと、どんどん複雑になる。そこで、先生たちのそういう思慮はいったん脇に置いて、「児童はランダムに各クラスに振り分けられる」と考えることにしてみよう。この場合、クラス替えをした後に、前のクラスのクラスメートは、何人、自分と同じクラスに入るだろうか?
 
確率的な計算をするためには、なにか具体的な設定が必要だ。今回は、ある学年の児童数は全部で120人、1クラス30人で4つのクラスに分けられるものとしよう。あなたは、そのうちの1人だとする。クラス替えの前に、あなたには旧クラスメートが29人いた。このうち、何人がクラス替えの後にも、同じクラスに入るだろうか?

計算してみると、旧クラスメートのうち7人と一緒になる確率が最も高くて19.6%。つづいて、6人と一緒の確率が17.6%、8人の確率が17.2%となる。一緒になる人数の平均値は、7.07人となる。
 
この平均値は、次のように計算する。クラス替え後のあなたのクラスには、すでにあなたが入ってしまっているから、残りの人数は29人。あなた以外の児童119人のうち、29人があなたと同じクラスに入る。つまりクラス替え後に、あなたのクラスメートになる確率は、24.37%(=29人÷119人)。旧クラスメート29人に、この24.37%の確率を掛け算して、7.07人(=29×24.37%)。この平均値は、ざっくりと29人を4つのクラスに分けた場合の7.25人(=29÷4)とだいたい同じで、感覚的にも、まあ妥当なところといえるだろう。
 
では、何回もクラス替えをしたのに、小学校の6年間、ずっと同じクラスになるというクラスメートの数はどれくらいいるだろうか。
 
2年生に上がるときから、6年生に上がるときまで、毎年クラス替えをするとしよう。1年生のときの、あるクラスメートと6年間ずっと同じクラスとなる確率は、24.37%を5回掛け算して、0.086%となる。ものすごく小さな確率だ。
 
これは、だいたい4回に1回当たりとなるくじ引きで、5回連続して当たりを引き当てる可能性と同じくらいで、めったに起こらない。この確率を1年生のときのクラスメートの数29人に掛け算して0.025人(=29人×0.086%)。つまり、確率的には、クラスが6年間ずっと同じというクラスメートは、ほぼいないといえる。
 
では、クラス替えが2年に1回の場合はどうだろうか。クラス替えは、3年生に上がるときと、5年生に上がるときの2回だけだ。計算してみると、6年間一緒の人は1.7人となる。1人か2人と、ずっと同じクラスという結果だ。ずっと、同じクラスメートになる人は、貴重な存在といえる。
 
クラスの構成を少し変えてみよう。1クラス40人で、クラスの数が3つの場合はどうだろうか。毎年クラス替えをする場合は、6年間同じクラスになる人数は、0.15人にとどまる。やはり、0に近い。一方、クラス替えが2年に1回の場合は、4.2人がずっと同じクラスメートになる。これだと、ずっと同じクラスという人が、4、5人はいるという結果だ。
 
ただし、実際には前述したように「児童はランダムに各クラスに振り分けられる」という前提は成り立たない。先生たちの思慮により、計算結果のようになるとは限らないので、注意が必要だ。
 
確率などというと、どこか機械的で小難しいもの、というイメージを持つ人もいるだろう。しかし、確率を考えたり計算したりすることで、クラスメートの貴重さがわかり、連帯感を高めるきっかけになるのであれば、それはそれで素晴らしいことだと思われるが、いかがだろうか。
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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

(2019年07月12日「研究員の眼」)

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