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ペニーのゲーム-有利・不利のあるコイン投げゲームもある

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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まず、偏りのないコインを1枚用意する。このコインを繰り返し投げて、出た面が表か裏かを書き記すことにする。表は英語のHeadを表す「H」、裏はTailを表す「T」の文字で記す。たとえば、
H T H H T H T T T H T H H T T T H T H T……
といった感じで、コインの出た面に応じて、文字列ができあがっていく。
ペニーのゲームは、AさんとBさんの2人が対戦する形式で行われる。2人は、HとTを使ってできる3文字のパターンの中から1つを選ぶ。そして、コイン投げを繰り返すことでできあがっていく文字列の中に、選んだ3文字のパターンが、先に現れたほうの人が勝ちとなる。
3文字のパターンとして考えられるのは、つぎの8通りだ。
(H H H)、(H H T)、(H T H)、(H T T)、(T H H)、(T H T)、(T T H)、(T T T)
まず、Aさんが、この8つの中から1つパターンを選ぶ。次に、Bさんが、Aさんが選んだ以外の、残りの7つの中から1つパターンを選ぶ。AさんとBさんの選んだパターンのうち、どちらが先に現れるかで勝負が決まる。
ここで、このゲームの勝負の行方について、すこし考えてみよう。もともとコインには偏りがないから、表も、裏も、出る確率は1/2ずつだ。そのため、AさんもBさんも、8つのパターンのうちどれを選んでも、有利になったり不利になったりすることはないような気がする。「どのパターンも出る可能性は同じだろうから、難しく考えずに、適当に選ぼう」という感じで、パターンのうちの1つを選んでしまいそうだ。
ところが、具体的な事例を考えてみると、このゲームには、パターンの選択しだいで、大きな有利・不利が潜んでいることがわかる。たとえば、Aさんが (H H H) のパターンを選んだときに、Bさんが(T H H) を選んだとしよう。この場合、ゲームを開始して、最初の3回のコイン投げで、立て続けにHが出たときには、もちろんAさんの勝ちだ。だが、それ以外のときは、すべてBさんが勝つことになる。なぜか?
ゲームを開始して最初の3回のコイン投げのなかで1度でもTが出ると、その後、どこかで (H H H)のパターンが現れるためには、まずHが2つ続けて出なくてはならない。ところが、その2つのHの前にはTが出ているため、2つめのHが出た時点で、(T H H) のパターンが先に現れることになるからだ。
つまり、Aさんが (H H H) を選んだときには、Bさんは (T H H) を選ぶことにより、勝つ確率を格段に高めることができる。この場合、Aさんの勝つ確率が1/2の3乗で1/8なのに対して、Bさんの勝つ確率は1から1/8を引いて7/8となる。Bさんが勝つ確率は、Aさんが勝つ確率よりも、7倍も高くなるのだ。
実は、このゲームは、パターンを先に選ぶAさんよりも、Aさんの選択を見た上でパターンを選ぶBさんの方が、必ず有利になる。後手のBさんが選択を間違えなければ、「後手必勝」とまでは言えないが、後手がかなり有利になるゲームなのである。
Aさんの選んだパターンに対して、Bさんが勝つために選ぶべきパターンは、つぎのようになる。
このように、コイン投げのような偶然性に支配される事象がベースにあったとしても、ゲームの組み立て方によっては、プレーヤー間の有利・不利が、はっきりとつけられてしまう場合がある。
ギャンブルはもちろん、どんなゲームをやるにしても、勝つためには、事前にゲームのルールや仕組みをよく理解しておく必要があると思われるが、いかがだろうか。
(2019年04月11日「研究員の眼」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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