2023年03月20日

さらなるキャッシュレス化に向けた課題について整理する(2)-さらなるキャッシュレス化に必要な施策について考える

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹

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■要旨
 
  • キャッシュレス決済の利用は日本において日常的なものになってきているが、今後さらなるキャッシュレス化を実現するための課題や施策について整理した。
     
  • 消費者はキャッシュレス決済に対して「お店に対する不安」「決済の失敗」「不正利用」「使いすぎ」「個人情報の漏洩」といった不安を抱えており、これらの不安を払しょくしていく施策が求められる。
     
  • 「お店に対する不安」を解消させるには、店舗サイドのキャッシュレス化が十分に進展することだけでなく、店舗側がキャッシュレス決済を歓迎するような解決策も求められる。
     
  • 「決済の失敗」に対する不安には、消費者が決済システムを間違った使い方をしたことで被る被害に対する新しい利用者保護の考え方について整理していく必要がある。
     
  • 「使いすぎ」に対する不安を払しょくするには認知バイアスへの対処が必要であり、金融教育の役割が重要になる。
     
  • 「不正使用」や「個人情報の漏洩」に対する消費者の不安の解消は、消費者・事業者・行政におけるデータをシームレスにつないで利活用を進めていくために解決すべき優先課題と言える。
     
  • 店舗サイドのキャッシュレス化の進展状況は「企業規模」「商品単価」「業種業態」で濃淡が生じており、それぞれのボトルネックに応じた対策が求められる。
     
  • 硬貨をキャッシュレス化する民間サービスの撤退・縮小が相次いでいることで、商品単価の小さい店舗や自動販売機が硬貨の受け皿になっており、キャッシュレス化を妨げている。
     
  • 決済のデジタル化により決済現場における業務効率化が期待できる反面、決済システムが完全なものかどうか確認するコスト負担が増える点について認識する必要がある。
     
  • 給与のデジタル払い導入などで日常の決済を含めた家計管理が高度化されると、資産形成に関する計画が立てやすくなる副次的な効果が得られ、貯蓄から投資への流れをより一層加速することができるかもしれない。
     
  • これまでは経済メリットがキャッシュレス化のドライバーになっていたが、今後は社会的意義を共有することもキャッシュレス化のドライバーになりうる。


■目次

1――さらなるキャッシュレス化に向けた課題
  1|消費者のキャッシュレス決済に対する不安の解消
  2|店舗サイドのメリット・デメリットに対する細分化した施策の必要性
  3|硬貨による決済への対応
  4|決済デジタル化に伴う店舗サイドの新たなリスクへの対処
  5|「貯蓄から投資」への寄与に対する期待
  6|経済メリットに留まらないキャッシュレス化の社会的意義の共有
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金融研究部   金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任

福本 勇樹 (ふくもと ゆうき)

研究・専門分野
金融・決済・価格評価

経歴
  • 【職歴】
     2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
     2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
     ・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)

    【著書】
     成城大学経済研究所 研究報告No.88
     『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
      著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
      出版社:成城大学経済研究所
      発行年月:2020年02月

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