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資産形成に向いている投資商品とは何か-何に投資をしたら良いか迷うのであれば、iDeCoやつみたてNISAなどを活用すべき

金融研究部 熊 紫云
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しかし、世の中には、預貯金、株式、債券、不動産、FX取引、暗号資産、NFTなど多種多様な商品が溢れている。安心してお金を増やしていくために、どのような金融商品を購入したら良いのかを考えてみたい。特に、資産形成に向いていない投機やギャンブルと、資産形成に向いている投資との違いについて説明してみたい。資産形成をする際に少しでも参考になれば幸いである。
1――ゼロ、マイナス、プラスサムゲームとは
ゼロサムゲームというのは参加者全員の利益と損失の合計が変わらずゼロとなるゲームなのだが、その代表例としては麻雀がある(図表1)。
一般的に麻雀ではゲーム開始の時点で、プレイヤーのAさん、Bさん、Cさん、Dさんの持ち点がそれぞれ25,000点、合計100,000点である。ゲームでは4人の中で、この100,000点を取り合う。例えば、ゲーム終了の時点、Dさんは50,000点、Cさんは30,000点、Aさんは20,000点、Bさんは0点という結果になったとする。Aさんは5,000点、Bさんは25,000点負けたのに対して、Cさんは5,000点、Dさんは25,000点勝ったことになる。しかし、プレイヤー4人の持ち点の合計は常に100,000点であり、参加者全員の利益合計は常にゼロになる。
このことをアップルパイに喩えてみると、ゲームでパイ(参加者の持ち分)の分け方を決める場合、ゲーム終了時のパイの大きさはゲーム開始時と同じで変わらないので、参加者全員で、同じパイを奪い合うゲームということになる。
このように、ゼロサムゲームでは、誰かの利益は、必ず誰かの損失になるので、参加者全員の勝ち負けを合計するとゼロになる。
「宝くじ公式サイト」令和3年度のデータによると、宝くじの売上額が合計8,133億円である。しかし、支払われた当選金は3,758億円と、8,133億円の半分にも満たさない。宝くじを買う参加者全員で4,375億円の損となるので、マイナスサムゲームと言える。
宝くじは各都道府県等が実施する公共事業などで使う資金の調達を目的として発売されている。基本的に参加者全員が受け取る当選金は宝くじの売上額より大幅に少ない。宝くじを買う参加者のうち、運がとても良く1億円以上の高額当選とかする参加者はほんの一握りだ。売上額の残りはおおむね社会福祉のために使われている。アップルパイで言うと、参加者全員が受け取るパイを全部合わせてもパイの大きさは半分にもならないということである。
例えば、東京都からプレミアム食事券10,000円で購入すると、購入額よりも25%お得で12,500円分のプレミアム食事券をもらえる。2名の食事券購入額合計が20,000円、食事券利用額合計が25,000円になり、食事券を購入した人はそれぞれ2,500円、合計5,000円分だけ得をすることになる。
これをアップルパイに喩えてみると、ゲームに参加する参加者全員が受け取るパイを全部合わせると、もともとのパイより大きくなるお得なゲームということになる。
次章で、この3種類のゲームの違いを応用して、投機とギャンブルと投資の見分け方を提示し、何故、投資が資産形成に向いているのかについて説明していきたい。
2――投機、ギャンブルと投資
麻雀のような参加者全員の持ち分合計が一定で利益合計がゼロのゼロサムゲームの場合、または将来の参加者全員の持ち分合計と利益合計が不明、つまり将来の価値がどうなるかわからない場合を「投機」とする。つまり、投機の場合、参加者全員の利益の平均がゼロか不明で、参加者それぞれが期待できる利益もゼロか不明なので、資産形成に向いていない。
さらに、宝くじのような参加者全員のパイが必ず小さくなるマイナスサムゲームは資産形成に最も向いていない。参加者全員の持ち分合計が減っていき、利益合計がマイナスになるからである。ギャンブルであるパチンコ、競馬、競艇等は、宝くじと同じマイナスサムゲームである。「ギャンブル」や「宝くじ」はあくまで娯楽として楽しむものであり、長期の資産形成には向いていない。
食事券キャンペーンはプラスサムゲームではあるが、短期間で終了してしまう。もし、長期的かつ継続的にお得になるプラスサムゲームがあれば、参加者全員の持ち分合計が今後増えていくと期待できるため、長期的に利益合計がプラスになり、参加者それぞれが期待できる利益もプラスであり、資産形成に向いている。結論から言うと、長期の「投資」はプラスサムゲームと考えて良いため、普通の人にとっては、長期の資産形成のためには「投資」を有効活用することが必要であり望ましい。
3――資産形成に向いている投資商品とは何か
尚、株式、債券などの証券商品は投資手法によって、長期投資と短期売買に分けることができるが、この章では長期投資を前提に説明していきたい。ちなみに筆者は投資商品であっても短期売買の取引をするとゼロサムゲームとなり「投機」に該当すると考えている。
Bさんは1年間保有し利息合計1万円を受け取り、Cさんに時価93万円で債券を売却した。Cさんは2年間保有し利息合計2万円を受け取り、Dさんに時価97万円で売却した。Dさんは保有期間中に、利息合計4万円を受け取り、満期になるまで保有し続けた。10年後の満期償還時に、Dさんは償還額100万円を受け取った。
すると10年後の各投資家の損益状況は、Aさんは売却損▲5万円、利息受取+3万円で▲2万円、Bさんは売却損▲2万円、利息受取+1万円で▲1万円、Cさんは売却益+4万円、利息受取+2万円で+6万円、Dさんは償還益+3万円、利息受取+4万円で+7万円である。
各投資家の損益が様々だが、投資家全員の利益合計が+10万円でプラスである。この10万円は、インカムに相当する累計利息受取の10万円である。ちなみに、このケースでは債券の売買取引はゼロサムゲームであり、投資家全員の売買(償還)損益の合計は0万円である。
債券にはあらかじめ定められた利息というインカムをもらえる仕組みがあるためプラスサムゲームとなる。会社が倒産しない限り、今後の投資家全員の持ち分合計がインカム分だけ増えていき、投資家全員の利益合計がプラスであることが合理的に期待できるため、債券の長期保有は「投資」であり、長期の資産形成に向いている。
(2023年02月21日「基礎研レポート」)
金融研究部
熊 紫云
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