2023年02月13日

ロシアの物価状況(23年1月)-前年比伸び率は小幅に低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比で小幅低下

2月10日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(23年1月)】
前年同月比は11.77%、市場予想1(11.63%)より上振れ、前月(11.94%)から低下(図表1)
前月比は0.84%、予想(0.80%)より上振れ、前月(0.78%)から加速した

【コア指数2(23年1月)】
前年同月比は13.72%、前月(14.31%)から低下した(図表2)
前月比は0.30%、前月(▲0.03%)からプラスに転じた

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:前月比・前週比で見た物価上昇圧力はコロナ禍前と同じような状況

1月のロシアのインフレ率は前年比で11.77%となり22年12月の11.94%から若干低下した。ただし、低下スピードは22年11月以降かなり緩やかになっている。

インフレ率を大分類別に見ると、食料品が前年比で22年4月のピーク(20.48%)からの下落が急速で1月は10.16%まで低下した。財(非食料品)は22年3月のピーク(20.34%)から1月に12.19%まで低下した。一方、サービスは1月に一段と上昇して13.47%となり、ウクライナ侵攻後のピークを更新した。なお、コア指数は前年比で1月は13.72%となり、総合指数と同様に22年4月(20.37%)をピークに減速している。

前月比では、総合指数が1月に0.84%と5か月連続のプラスの伸び率となり、足もとでは伸び幅も拡大している。コア指数も前月比0.30%と22年12月(▲0.03%)のマイナスからプラスに転じた(図表3)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
また、別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、5月下旬からゼロもしくはマイナスとなる時期が続いていたが、9月下旬にプラスに転じ、11月中旬以降は0.1%台~0.2%台で推移している。この伸び率はウクライナ侵攻前の伸び率とほぼ同程度の状況と言える(最新は1月31日から2月6日までの上昇率で0.26%、図表4)。
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は1月には11.6%まで低下した。期待インフレ率は3月には18.3%まで上昇した後、4月には12%台に急低下し、その後12%程度で横ばい圏での推移となっている(図表5)。
品目別の上昇率では3(図表6)、1月は前年比で海外旅行サービス(68.67%)、洗剤(28.96%)、保険サービス(25.23%)の上昇率が高い。

前月比では、その他サービス(▲5.63%)、穀物・豆(▲2.24%)、グラニュー糖(▲1.54%)、の下落率が大きい一方、青果物(11.38%)、旅客サービス(3.95%)、海外旅行サービス(3.07%)の上昇率が高かった。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス(1.3%ポイント)、海外旅行サービス(0.7%ポイント)、乳製品(0.4%ポイント)、家庭サービス(0.4%ポイント)、アルコール(0.3%ポイント)となった。ガソリン、テレビ、卵といった前年比でマイナス寄与となっている品目もあるが、それほど大きな寄与ではない。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
前月比上昇率の寄与では青果物(約0.52%ポイント)、住居・公益サービス(約0.16%ポイント)、旅客サービス(約0.08%ポイント)の押し上げ寄与が大きい。

なお、現時点で統計局ウェブサイトでは品目別として1月の乗用車の上昇率が公表されていないが、22年12月時点では、引き続き乗用車の前年比上昇率寄与(1.6%ポイント)が特に大きくなっている。住居・公益サービス(1.2%ポイント)の寄与は(22年12月時点では)乗用車に次いで大きい品目となる(図表9)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年02月13日「経済・金融フラッシュ」)

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