- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 世界経済 >
- IMF世界経済見通し-成長率を上方修正、軽微な景気減速を想定
IMF世界経済見通し-成長率を上方修正、軽微な景気減速を想定
経済研究部 主任研究員 高山 武士
1.内容の概要:23年は前年比2.9%に上方修正
2.内容の詳細:中国の経済再開と商品価格高騰でのコストプッシュインフレ緩和がプラス材料
世界経済成長率(ベースライン)は、昨年22年の見込みと、今年23年が上方修正され、来年24年が下方修正された(22年3.2(改訂前)→3.4%(改訂後)、23年2.7→2.9%、24年2.2→2.1%)。
IMFは成長率の上方修正の要因として、足もとでは労働市場のひっ迫を背景にした内需の底堅さや財政支援による効果があり、先行きは中国の経済再開(reopening)が予想より速い回復を促すとしている。その結果、世界的な景気後退期によく起きる世界GDPや世界一人当たりGDPのマイナス成長は見込んでいない。ただし、中銀の利上げ、ロシア・ウクライナ戦争が経済活動の重しとなり、経済成長が鈍化し、過去の平均成長率(00-19年で3.8%)を下回るとしている。
成長率見通しを地域別に見ると(前掲図表2、図表3)、23年の景気減速の主因は利上げと戦争の影響を受ける先進国(22年2.4→2.7%、23年1.1→1.2%、24年1.6→1.4%)であり、新興国・発展途上国(22年3.7→3.9%、23年3.7→4.0%、24年4.3→4.2%)は中国の経済再開の効果もあり、底打ちしたとの見通しとなっている。
先進国では米国が内需の底堅さを反映して、足もとの成長率が上方修正される一方、24年は利上げの影響により下方修正された(22年1.6→2.0%、23年1.0→1.4%、24年1.2→1.0%)。ユーロ圏は、卸売エネルギー価格の下落や、物価高対策としての財政支援策の効果で23年の見通しが上方修正された(22年3.1→3.5%、23年0.5→0.7%、24年1.8→1.6%)。また、ガス貯蔵が進んだことでこの冬にガス不足となる可能性は低いと評価している。ドイツやイタリアではマイナス成長が見込まれていたが、今回の改訂でプラス成長に上方修正された。一方、英国は財政・金融の引き締めを受けて23年が大きく下方修正され、マイナス成長見通しとなった(22年3.6→4.1%、23年0.3→▲0.6%、24年0.6→0.9%)。日本は、円安による企業利益の増加などで23年の成長率が上方修正されている(22年1.7→1.4%、23年1.6→1.8%、24年1.3→0.9%)。
新興国・途上国では、大国である中国の23年の成長率が大幅に上方修正された(22年3.2→3.0%、23年4.4→5.2%、24年4.5→4.5%)。同じく大国であるインドについては見通しにほぼ変化がなかった(22年6.8→6.8%、23年6.1→6.1%、24年6.8→6.8%)。なお、戦争当事者であるロシアは成長率が大幅に上方修正されている(22年▲3.4→▲2.2%、23年▲2.3→0.3%、24年1.5→2.1%)。
インフレ率の見通しは、世界全体で若干上方修正されている(22年8.8→8.8%、23年6.5→6.6%、24年4.1→4.3%、前掲図表1)。なお、IMFは22年7-9月期が世界の総合インフレ率のピークだったと評価している。
IMFは見通しに対するリスクバランスを下方に傾いているが、前回の見通し作成時より下方リスクは和らいだとしている。
具体的には、上振れリスクとして「ペントアップ需要」(ただし景気押し上げ要因となるとともに、インフレの押し上げ要因にもなる)、「ディスインフレの加速」(失業増を伴わない賃金インフレの鎮静化)を挙げる一方、下振れリスクとして、「中国の回復失速」(コロナ禍による健康被害、不動産危機の深刻化)、「ウクライナでの戦争激化」(ガス需給や穀物供給なども含む)、「過剰債務」(特に低所得国、新興国)、「インフレの長期化」(労働市場のひっ迫による賃金の予想を上回る伸び)、「急激な金融市場の価格調整」(インフレ懸念に伴う金融資産価格の変動幅の増加)、「地政学的分断」(世界経済のブロック化)を挙げている。
1 同日に「レジリエンスの兆しが見られ中国の経済活動が再開する中でも世界経済がさらなる減速へ(Global Economy to Slow Further Amid Signs of Resilience and China Re-opening)」との題名のブログも公表している。
2 修正幅が四捨五入して0.0%ポイントの国を横ばいとした。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年01月31日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
高山 武士のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/12/13 | ECB政策理事会-3会合連続となる利下げを決定 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
2024/12/13 | 欧州経済見通し-逆風のなか、回復は緩慢な足取りに | 高山 武士 | Weekly エコノミスト・レター |
2024/12/12 | ロシアの物価状況(24年11月)-足もとのインフレ圧力はかなり強い | 高山 武士 | |
2024/12/06 | ブラジルGDP(2024年7-9月期)-高成長維持、前年比は4.0%まで上昇 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年12月13日
ECB政策理事会-3会合連続となる利下げを決定 -
2024年12月13日
インド消費者物価(24年11月)~11月のCPI上昇率は4カ月ぶりに低下、食品価格の高騰がやや緩和 -
2024年12月13日
海底資源探査がもたらす未来-メタンハイドレートと海底金属 -
2024年12月13日
日銀短観(12月調査)~景況感はほぼ横ばい、総じて「オントラック」を裏付け、日銀の利上げを後押しする内容 -
2024年12月13日
グローバル株式市場動向(2024年11月)-トランプ氏の影響で米国は上昇するが新興国は下落
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【IMF世界経済見通し-成長率を上方修正、軽微な景気減速を想定】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
IMF世界経済見通し-成長率を上方修正、軽微な景気減速を想定のレポート Topへ