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- ECB政策理事会-12月の「予告」通り、0.50%ポイントの利上げ
2023年02月03日
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1.結果の概要:5会合連続の利上げを決定
2月2日、欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)は政策理事会を開催し、金融政策について決定した。概要は以下の通り。
【金融政策決定内容】
・0.50%ポイントの利上げを決定(2/8から、主要3金利すべて引き上げ)
・次回3月の理事会で0.50%ポイント引き上げ、その後の金融政策経路について評価するつもり(intends)であることを明記
・3月初からのAPP削減後、社債再投資に関してはり気候変動対応のパフォーマンスが良い発行体に強く傾斜をかけて行うことを決定
【記者会見での発言(趣旨)】
・経済成長見通しに対するリスクはこれまでより均衡している
・インフレ見通しに対するリスクも、特に短期的には、これまでより均衡している
2.金融政策の評価:12月の「予告」通りの利上げ
ECBは今回の会合で、0.50%ポイント利上げを決定した。利上げ幅は前回12月の0.5%ポイントと同じく、市場の想定通りの内容だった。これで22年7月以降、政策金利を合計3.00%ポイント上昇させたことになる。
また、APPの削減について、前回12月の会合では、23年3月初から月150億ユーロのペースで減少させるという主要原則を決定していた。今回の会合で、これに加えて、社債購入の再投資部分をより気候変動対応のパフォーマンスが良い発行体に傾斜することも決定した。
前回、12月の会合では0.75%ポイントの利上げを主張するメンバーが多かったにも関わらず、将来の利上げ姿勢を強調し、タカ派スタンスを明確に打ち出すことで利上げ幅を0.50%ポイントにしたという経緯があった(声明文に「大幅に(significantly)、安定したペース(steady pace)で引き上げ」と明記)ことが議事要旨から明らかになっている。今回の決定は12月の「予告」通り、安定したペースである0.50%ポイントの利上げとなった。
また今回は、声明文に次回3月会合で0.50%ポイントの利上げを意図(intend)している、と明記し、さらに強いコミットを示している。一方、5月以降の方針が明示されなかったため、質疑応答でも質問が相次いだ。ラガルド総裁は3月が利上げのピークと捉えてはいけないと牽制しつつも、5月以降の具体的な利上げ幅やペースについては言質を与えず、3月以降での状況を評価して決める方針であることを強調した。
次回3月の決定も「予告」通り0.50%ポイントの利上げがなされる可能性は高いだろう。ただし、今回、景気判断やインフレ見通しのリスクについて、より均衡しているとの判断に変化している。12月の決定はタカ派主張のメンバーが多かった印象だが、今回の決定について理事会メンバーの主張や姿勢に変化があったのか、議事要旨などで明らかにされる詳細が注目される。
また、APPの削減について、前回12月の会合では、23年3月初から月150億ユーロのペースで減少させるという主要原則を決定していた。今回の会合で、これに加えて、社債購入の再投資部分をより気候変動対応のパフォーマンスが良い発行体に傾斜することも決定した。
前回、12月の会合では0.75%ポイントの利上げを主張するメンバーが多かったにも関わらず、将来の利上げ姿勢を強調し、タカ派スタンスを明確に打ち出すことで利上げ幅を0.50%ポイントにしたという経緯があった(声明文に「大幅に(significantly)、安定したペース(steady pace)で引き上げ」と明記)ことが議事要旨から明らかになっている。今回の決定は12月の「予告」通り、安定したペースである0.50%ポイントの利上げとなった。
また今回は、声明文に次回3月会合で0.50%ポイントの利上げを意図(intend)している、と明記し、さらに強いコミットを示している。一方、5月以降の方針が明示されなかったため、質疑応答でも質問が相次いだ。ラガルド総裁は3月が利上げのピークと捉えてはいけないと牽制しつつも、5月以降の具体的な利上げ幅やペースについては言質を与えず、3月以降での状況を評価して決める方針であることを強調した。
次回3月の決定も「予告」通り0.50%ポイントの利上げがなされる可能性は高いだろう。ただし、今回、景気判断やインフレ見通しのリスクについて、より均衡しているとの判断に変化している。12月の決定はタカ派主張のメンバーが多かった印象だが、今回の決定について理事会メンバーの主張や姿勢に変化があったのか、議事要旨などで明らかにされる詳細が注目される。
3.声明の概要(金融政策の方針)
2月2日の政策理事会で発表された声明は以下の通り。
(政策金利、フォワードガイダンス)
(資産購入プログラム:APP、パンデミック緊急資産購入プログラム:PEPP)
(資金供給オペ)
(その他)
なお、同日の会見後、APP削減方法の詳細が公表された。声明文で言及されていない詳細は以下の通り
- 理事会は、政策金利を大幅に(significantly)、安定したペース(steady pace)で引き上げ、十分に引き締め的な水準に維持することで、2%の中期目標にすみやかに(timely)戻す方針を維持する
- 理事会は本日、理事会は3つの主要な政策金利を0.50%ポイント引き上げることを決定し、さらなる引き上げを行う予定(expects)である
- 基調的インフレ圧力の観点からは、理事会は政策金利を次回3月の理事会で0.50%ポイント引き上げ、その後の金融政策経路について評価するつもり(intends)である
- 政策金利を引き締め的な水準に維持することは、需要を抑制することで時間の経過とともにインフレを低下させ、インフレ期待が恒常的に上方シフトすることを防ぐ
- いずれせよ、理事会の将来の政策金利決定は、引き続きデータに依存し、会合毎のアプローチ(meeting-by-meeting approach)に基づいて行う
- 理事会はまた、本日資産購入策(APP)の下でのユーロシステムの保有証券の削減方法を決定した
- 12月に発表したように、APPポートフォリオは3月初から6月末まで月額平均150億ユーロ削減し、その後の削減ペースは今後決定する予定である
- 部分的な再投資は、広く、現在の慣行に沿って実施される
- 特に再投資は、APPの各構成プログラムの償還割合に比例的に実施し、PSPPではそれぞれの国や国際機関発行体の償還割合に応じて行う
- ユーロシステムの社債購入については、再投資をより気候変動対応のパフォーマンスが良い発行体に強く傾斜をかけて行う
- このアプローチは、パリ合意目標に沿って、ECBの物価安定の目的を損なうことなく、ユーロシステムの保有社債の段階的な脱炭素化を支援するだろう
(政策金利、フォワードガイダンス)
- 理事会は3つの政策金利を0.50%ポイント引き上げることを決定した(利上げの決定)
- 主要リファイナンスオペ(MRO)金利:3.00%
- 限界貸出ファシリティ金利:3.25%
- 預金ファシリティ金利:2.50%
- 2月8日から適用
(資産購入プログラム:APP、パンデミック緊急資産購入プログラム:PEPP)
- APPの元本償還分の再投資(内容の変更なし)
- APPの元本償還分は23年2月末まで全額再投資を実施
- その後は償還額を全額は再投資せず、APP残高は秩序だった予測可能なペース(measured and predictable pace)で削減させる
- この削減は23年6月末まで平均月額150億ユーロのペースとなり、その後については、今後決定する予定
- PEPP元本償還分の再投資実施(変更なし)
- PEPPの元本償還の再投資は少なくとも2024年末まで実施(変更なし)
- 将来のPEPPの元本償還(roll-off)が適切な金融政策に影響しないよう管理する(変更なし)
- PEPP償還再投資の柔軟性について(変更なし)
- 理事会は引き続きPEPPの償還再投資について、コロナ禍に関する金融政策の伝達機能へのリスクに対抗する観点から、柔軟性を持って実施する
(資金供給オペ)
- 流動性供給策の監視(変更なし)
- 銀行が貸出条件付長期資金供給オペ下での借入額の返済を行うなか、理事会は条件付貸出オペが金融政策姿勢にどのように貢献しているかを定期的に評価する
(その他)
- 金融政策のスタンスとTPIについて(変更なし)
- インフレが2%の中期目標に戻るよう、すべての手段を調整する準備がある
- 伝達保護措置(TPI)は、ユーロ圏加盟国に対する金融政策伝達への深刻な脅威となる不当で(unwarranted)、無秩序な(disorderly)市場変動に対抗するために利用可能であり、理事会の物価安定責務の達成をより効果的にするだろう
なお、同日の会見後、APP削減方法の詳細が公表された。声明文で言及されていない詳細は以下の通り
- 再投資額はAPPの各構成プログラム、つまり、公的部門購入プログラム(PSPP)、資産担保証券購入プログラム(ABSPP)、カバードボンド購入プログラム第三弾(CBPP3)、公的部門購入プログラム(CSPP)の償還割合に比例的に実施する
- 民間部門プログラム(ABSPP,CBPP3、CSPP)について、各プログラムにおける購入額をより適切に管理するために、発行市場(primary market)からの購入は部分的な再投資を開始する前に終了する予定である
- そのため、部分的再投資中は、ユーロシステムは流通市場(secondary market)からの購入に焦点を当てることになる
- しかしながら、気候変動対応で良いパフォーマンスの非金融機関企業の発行体とグリーン社債は引き続き発行体市場からの購入を続ける
4.記者会見の概要
政策理事会後の記者会見における主な内容は以下の通り。
(冒頭説明)
(経済活動)
(インフレ)
(冒頭説明)
- (クロアチアのユーロ圏加入への歓迎の言葉)
- (声明文冒頭に記載の利上げAPP削減への言及)
- 経済とインフレ率の状況をどう見ているかの詳細と金融・通貨環境への評価について述べたい
(経済活動)
- ユーロスタットの速報値では、ユーロ圏経済は22年10-12月期に0.1%成長した
- 12月のスタッフ見通しを上回ったものの、経済活動は22年半ばから急激に鈍化しており、短期的には弱い状況が続くと見られる
- 世界経済活動の鈍化と地政学的な不確実性の高まり、特にロシアのウクライナとその市民に対する正当化できない侵攻が、引き続きユーロ圏の成長に対する逆風となっている
- 逆風は、高いインフレ率と資金調達環境のタイト化とあいまって、支出や、特に製造業部門の生産を鈍化させている
- しかしながら、供給網の制約は緩やかに緩和しており、ガス供給はより安定、企業は依然として、大きな受注残への対応をしており景況感が改善している
- 加えて、サービス部門の生産は、経済再開の影響と余暇活動への需要の強さから維持されている
- 賃金上昇と最近のエネルギー価格上昇率の下落は、人々が高インフレによって経験した購買力の低下を軽減している
- これは、消費の下支えになるだろう
- 総じて、経済は予想よりも強靭であり、今後数四半期も回復が見込まれる
- 失業率は12月に6.6%で歴史的に低い水準が維持されている
- しかしながら、求人の伸び率は低下していると見られ、失業率は今後数四半期のうちに上昇すると見込まれる
- 政府のエネルギー価格高騰の影響から経済を守るための措置は一時的で対象を絞り、エネルギー消費抑制のインセンティブを維持するよう適切に設計されるべきである
- 特に、エネルギー危機の深刻さが軽減していることから、エネルギー価格の低下にあわせて、協調してこれらの措置から速やかに脱却を始めることが重要となっている
- これらの原則を満たさない措置は、中期的なインフレ圧力を強め、より強力な金融政策で対応する必要を求められる
- さらに、EUの経済統治枠組み(economic governance framework)に沿って、財政政策は我々の経済をより生産的にし、高い公的債務を段階的に削減させる方向に向かうべきである
- ユーロ圏の、特にエネルギー部門での、生産余力を強化させる政策は、中期的な物価上昇圧力の削減に寄与するだろう
- この点に関して、政府は次世代EUの下での投資や構造改革を速やかに実行すべきである
- EUの経済投資枠組みの改革は迅速に完了されるべきである
(インフレ)
- ユーロスタットの速報値では、ドイツはユーロスタットの推計値が利用されているが、1月のインフレ率が8.5%となった
- これは12月の数値より0.7%ポイント低く、主にエネルギー価格が急減したことによる
- 市場の指標では、前回の会合時に予想されていたよりも、エネルギー価格は先々数年間、かなり低いと予想されている
- 食料インフレは14.1%と高く、食料生産に関する過去のエネルギー価格や原材料の高騰が消費者物価に転嫁されている
- インフレ圧力は引き続き高く、一部には一部は高いエネルギー費用の影響が経済全体に広がった結果と言える
- エネルギーと食料品を除くインフレ率は1月に5.2%に留まり、エネルギーを除く財のインフレ率は6.9%に上昇、サービスのインフレ率は4.2%に低下した
- その他の基調的なインフレ率の指標は引き続き高い
- 政府のエネルギー価格高騰から家計を補償する措置は、23年のインフレ率を鈍化させるが、措置が失効すれば、インフレ率は上昇するだろう
- 同時に、これらの措置の規模は、エネルギー価格の動向に依存し、インフレ率への影響は特に不確実である
- 供給の制約は緩やかに軽減しているが、ラグがあるため、依然として財インフレを押し上げている
- コロナ禍による行動制限の緩和も同様であり、ペントアップ需要の効果は弱まっているものの、特にサービス部門において価格上昇の原動力となっている
- 賃金上昇率は、労働市場のひっ迫感に支えられ、加速しており、高いインフレへのキャッチアップ(catch-up)が、賃金交渉の主題になっている
- 同時に、最近の賃金動向は12月のスタッフ見通しに概ね沿ったものとなっている
- ほとんどの長期インフレ期待の指標が現在は2%付近にあるが、引き続き注視している
(2023年02月03日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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