2023年02月02日

ユーロ圏消費者物価(23年1月)-エネルギー価格下落でインフレ率は大幅鈍化

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数は一気に8%台半ばまで減速

2月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)は1月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は8.5%、市場予想1(8.9%)を下回り、前月(9.2%)から減速(図表1)
前月比は▲0.4、予想(0.1%)を下回り、前月(▲0.4%)に続きマイナスの伸びだった

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は5.2%、予想(5.1%)を上回り、前月(5.2%)から横ばい(図表2)
前月比は▲0.8%、前月(0.6%)からマイナスに転じた

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も同様)。

2.結果の詳細:エネルギー価格の下落がインフレ鈍化の主因

23年1月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で8.5%となり、12月の9.2%から大幅に低下した3。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は5.2%と12月(5.2%)から横ばいとなった。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が11月6.1%→12月6.4%→1月6.9%、「サービス」(エネルギーを除く)が1月4.2%→12月4.4%→1月4.2%となり、1月は財の上昇が目立った(前掲図表2)。前年同月比寄与度は、「財」が1.69%ポイント程度、「サービス」が1.72%ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で11月34.9%→12月25.7%→1月17.2%と大幅な減速が続き、前月比でも▲0.9%と3か月連続で下落した。エネルギーの前年同月比寄与度は2.26%ポイント程度(12月は3.79%ポイント)まで低下したと見られる(前掲図表1)。

また、費目別には12月までのデータとなるが、光熱費が10月23.2%→11月20.6%→12月16.3%、輸送費が10月23.2%→11月20.6%→12月16.3%と下落が目立つ。一方、外食・宿泊費が10月8.4%→11月8.1%→12月8.3%、娯楽費が10月4.9%→11月4.7%→12月5.5%と(対面)サービス関連費用は底堅い動きとなっている(図表3)。
(図表3)ユーロ圏の費目別物価上昇率/(図表4)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で14.1%(12月13.8%)となり、やや加速傾向にある。飲食料のうち加工食品の伸び率は14.9%(12月14.3%)、未加工食品は11.6%(12月12.0%)となり、未加工食品の伸びが鈍化する一方、加工食品は加速が続いている(図表4)。飲食料の前年同月比寄与度は3.02%ポイント程度(12月は2.88%ポイント)と見られ、11月に続きエネルギーの寄与度を上回っている。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率は4、前年同月比で公表されている18か国中5か国が加速、13か国は減速した(図表5)。また、前月比では18か国中8か国がプラスの伸び率となった(図表6)。
 
3 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。
4 ドイツは当初1月のインフレ率(速報値)を1月31日に公表する予定だったが、技術的な問題で公表を翌週に延期するとした(ユーロ圏全体のHICP伸び率を計算するにあたってはEurostatによる推計値が使用されている)。
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年02月02日「経済・金融フラッシュ」)

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