2023年01月16日

ロシアの物価状況(22年12月)-コア指数は前月比で再びマイナスに

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数は前月比で加速したが、コア指数は前月比マイナスに

1月13日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(22年12月)】
前年同月比は11.94%、市場予想1(12.20%)より下振れ、前月(11.98%)から低下(図表1)
前月比は0.78%、予想(1.05%)より下振れたが、前月(0.35%)から加速した

【コア指数2(22年12月)】
前年同月比は14.31%、前月(15.06%)から低下した(図表2)
前月比は▲0.03%、前月(0.18%)からマイナスに転じた

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:12月は光熱費価格上昇の影響を受けてサービス物価が上昇

12月のロシアのインフレ率は前年比で11.94%となり11月の11.98%から若干ではあるが低下した。市場予想では前月からの上昇を見込んでいたが、予想を下回った。

大分類別に見ると、食料品が前年比で4月のピーク(20.48%)からの下落が急速で12月は10.29%まで低下した。財(非食料品)は3月のピーク(20.34%)から12月に12.70%まで低下した。一方、サービスは12月に一段と上昇して13.19%となり、ウクライナ侵攻後のピークを更新した。12月は光熱費の引き上げがサービス物価の押し上げ圧力となった(なお、次回の光熱費変更タイミングは24年7月となる予定)。

コア指数は前年比で12月は14.31%となり、総合指数と同様に4月(20.37%)をピークに減速しているものの、減速のスピードは総合指数と比較して緩やかな状況が続いている。

前月比では、総合指数が12月に0.78%と4か月連続のプラスの伸び率となり、伸び幅も拡大しているが、コア指数は前月比▲0.03%とマイナスに転じた(図表3)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
また、別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、5月下旬からゼロもしくはマイナスとなる時期が続いていたが、9月26日にプラスに転じ、その後14週連続でプラス圏の推移となっている(最新は1月1日から9日までの上昇率で0.24%、図表4)。
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は12月には12.1%となった。期待インフレ率は3月には18.3%まで上昇した後、4月には12%台に急低下し、その後12%を程度で横ばい推移している(図表5)。
品目別の上昇率では3(図表6)、12月は前年比で海外旅行サービス(70.68%)、洗剤(29.82%)、保険サービス(28.24%)の上昇率が高い。

前月比では、その他サービス(▲10.02%)、医療サービス(▲6.39%)、グラニュー糖(▲4.77%)、穀物・豆(▲1.89%)の下落率が大きい一方、住居・公益サービス(6.11%)、青果物(5.83%)、旅客サービス(3.50%)、卵(2.75%)の上昇率が高かった。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス(1.2%ポイント)、海外旅行サービス(0.7%ポイント)、乳製品(0.5%ポイント)、家庭サービス(0.5%ポイント)、アルコール(0.3%ポイント)となった。一方、テレビ、卵、青果物は前年比でマイナス寄与となった。前月比上昇率の寄与では住居・公益サービス(約0.61%ポイント)と成果物(約0.27%ポイント)が大きく物価を押し上げた要因となっており、これら除くと、ほとんど物価上昇圧力がない状況となる。この物価上昇圧力の弱さはコア指数が前月比マイナスとなったことにも表れている。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
なお、現時点で統計局ウェブサイトでは品目別として12月の乗用車の上昇率が公表されていないが、11月時点では、引き続き乗用車の前年比上昇率寄与(1.6%ポイント)が特に大きい状況となっている(図表9)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年01月16日「経済・金融フラッシュ」)

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