2022年12月15日

ロシアGDP(2022年7-9月期)-マイナス成長が続くがマイナス幅は縮小

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年同期比▲3.7%のマイナス成長

12月14日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
2022年7-9月期の前年同期比伸び率は▲3.7%、予想1(同▲4.0%)を上回り、前期(同▲4.1%)からマイナス幅が縮小した(図表1・2)

(図表1)ロシアの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ロシアの実質GDP成長率(供給項目別寄与度)
 
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:前期比では微増

ロシアの22年7-9月期の実質GDP伸び率は▲3.7%となり、4-6月期(▲4.1%)からマイナス幅が縮小した。コロナ禍前の水準(19年10-12月期)と比較すると▲2.3%という水準にある。また、季節調整系列の前期比で見ると、7-9月期は0.4%(年率換算1.8%)となり、4-6月期(▲5.2%、年率換算▲19.4%)からプラスに転じ、1-3月期(0.4%、年率換算1.5%)並みの成長率となった。

執筆時点では需要別のデータが未公表であるため、以下では公表されている産業別データなどを確認していく。

産業別の前年同期比は、第一次産業、第二次産業、第三次産業(金融・不動産)がプラス成長となったが、第三次産業(その他)は大幅マイナスに落ち込んだ(図表3・4)。7-9月期は特に、第三次産業の「小売・卸売業」のマイナス幅が大きかったほか、「水道業」「その他」「自家利用2」の落ち込みも目立つ。「小売・卸売業」の低迷からは、消費の弱さが垣間見える。なお、前期比で見ると7-9月期は「芸術・娯楽」の落ち込みも大きかった。西側諸国の制裁が課されるなかで注目される、原油生産などの行方を見ると、前期比1.2%とプラス成長だった。4-6月期は前期比で▲5.2%と大きく落ち込んだが、7-9月期に盛り返した形となる。
(図表3)ロシアの実質GDP成長率(22年4-6月期)
7-9月期の名目成長率は前年同期比7.6%で4-6月期の12.1%から大幅に低下する一方で、GDPデフレータ伸び率も7-9月期は前年同期比11.7%と1-3月期の23.4%をピークから大きく低下している(図表5)。
(図表4)ロシアの実質GDPの動向(供給項目別)/(図表5)ロシアの名目および実質成長率
(図表6)ロシアの実質GDP成長率 7-9月期のロシア経済は、4-6月期に続き前年同月比でマイナス成長となり、西側諸国が課した制裁の影響が引き続き経済の低迷に寄与していると想像できる。

ただし、悪化の勢いは鈍っている。経済発展省が公表する月次GDPの推計値では、6月に▲5.1%を記録した後、やや反発して▲4%前後での横ばい推移しており、10月時点でも▲4.4%となっている(図表6)。ロシアでは制裁による輸入禁止や外資系企業撤退への対応するため国内生産を増加させ、また原油輸出先を西側諸国以外へシフトさせることで、制裁の経済への影響を一部、軽減させていると見られる。引き続き今後の状況やデータが注目される。
 
2 自家利用の財・サービス。便宜的に第三次産業(その他)に含めた。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2022年12月15日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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