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- ウクライナ侵攻後のロシア経済
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- ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始し、およそ半年が経過した。
- 西側諸国は、軍事侵攻を受けて協調してロシアに迅速かつ厳しい経済・金融制裁を課し、戦争が長期化するなかで制裁を段階的に強化している。これらはロシア経済への下押し圧力となっている。
- 本稿では、主にロシア政府や中銀が公開しているデータをもとにして、戦争開始後のロシア経済の実体経済の現状を確認していく。
- 得られた主な結果は以下の通りである。
・実質成長率は戦争開始直後から急速に鈍化し、4-6月期では前年同期比▲4.0%まで落ち込んだ。
・成長率の落ち込み幅はコロナ禍時よりは小さいが、クリミア併合時よりも大きい。また、自動車生産や実質消費などは、コロナショック直後の厳しい行動制限を課した時期よりも大幅な落ち込みを示している。
・消費者物価指数は、戦争開始後に前年同月比で2桁の急上昇を記録した。上昇率はピークアウトしているが、依然として2桁台の上昇率が続いている。
・ロシア中銀は、戦争開始直後はルーブル安と物価高騰を受けて、政策金利を2月末に20%まで引き上げたが、その後7月には8%まで引き下げた。インフレ率は高めに推移しているが、景気の減速感が鮮明になるなかで、資金調達環境を緩和気味に維持するべきと判断したものと思われる。
・国際収支統計ベースで見たドル建ての財・サービス輸出入では、4-6月期(中銀推計値)に輸出の伸びが鈍化し、輸入はマイナスに転じている。貿易相手国から見れば、戦争開始直後に多くの主要国が対ロ輸出を減少させ、対ロ輸入では特にEUの減少が目立つ。一方、足もとにおいてはトルコや中国などが対ロ輸出・輸入を増加させており、インドも対ロ輸入を増やしている。
・ロシア経済は、年後半に向けさらに落ち込むと予想されているが、特に貿易については戦争や制裁の行方に大きく左右される状況が続くと見られる。G7首脳会議で公表されたロシア産の原油価格に対する上限設定措置や、欧州による「脱ロシア」の進展といった、制裁措置とその実効性が引き続き注目される。
(2022年08月16日「基礎研レター」)

03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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