2022年08月12日

ロシアの物価状況(22年7月)-コア指数も前月比マイナスに転じる

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数・コア指数ともに前月比マイナス

8月10日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(22年7月)】
前年同月比は15.10%、市場予想1(15.30%)を下回り、前月(15.90%)から低下(図表1)
前月比は▲0.39%、予想(▲0.20%)を下回り、前月(▲0.35%)からマイナス幅が拡大した

【コア指数2(22年7月)】
前年同月比は18.40%、予想(18.75%)を下回り、前月(19.18%)から低下(図表2)
前月比は▲0.18%、予想(0.05%)を下回り、前月(0.18%)からマイナスに転じた

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:財ではインフレ率の減速が続くが、サービスは2か月連続で前年比加速

7月のロシアのインフレ率は前年比で15.10%となり、6月の15.90%から低下した。

大分類別に見ると、食料品が前年比で3月17.99%→4月20.48%→5月20.05%→6月17.98%→7月16.76%、財(非食料品)が3月20.34%→4月20.19%→5月19.20%→6月17.92%→7月16.50%、サービスが3月9.94%→4月10.87%→5月10.03%→6月10.17%→7月10.75%と推移している。食料品および財(非食料品)の減速が続く一方、サービスは2か月連続で加速するという結果だった。

コア指数は前年比で3月18.69%→4月20.37%→5月19.87%→6月19.18%→7月18.40%と推移、減速が続いているものの、伸び率は依然として15年のピーク(15年3月の17.53%)は上回っている。

前月比では、総合指数が▲0.39%(6月▲0.35%)となり2か月連続のマイナス、コア指数も7月は▲0.18%(6月0.18%)となり、マイナスに転じている(図表3)。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、5月下旬からゼロもしくはマイナスとなる時期が続き、7月上旬には光熱費などの上昇を受けて一時的に高めの伸び率を記録する場面もあったが、その後は再びマイナス成長が続くという状況になっている(図表4)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 また、ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は7月には10.8%まで低下しており(6月は12.4%)、2014年以降のクリミア併合時におけるインフレ期待の低下スピードと比較しても、迅速にインフレ期待が鎮静化していることがわかる(図表5)。
品目別の上昇率では3(図表6)、7月は前年比で海外旅行サービス(60.35%)、グラニュー糖(42.30%)、穀物・豆(32.79%)、洗剤(32.70%)の上昇率が高い。

前月比では、青果物(▲11.53%)、その他(▲6.88%)、卵(▲4.42%)、グラニュー糖(▲3.51%)、の下落幅が大きく、旅客サービス(3.26%)、住居・公益サービス(3.37%)、海外旅行サービス(10.35%)、健康増進サービス(2.00%)の上昇率が高かった。また、総じて財は下落した品目が多く、サービスは上昇した品目が多い傾向が読み取れる。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は乳製品(0.7%ポイント)、海外旅行サービス(0.6%ポイント)、肉(0.6%ポイント)、住居・公益サービス(0.5%ポイント)となった。前月比上昇率の寄与は、住居・公益サービス(0.3%ポイント)、旅客サービス(0.1%ポイント)がプラスに寄与する一方、青果物(▲0.5%ポイント)が6月に続き大幅マイナスとなり、前月比伸び率のマイナスに大きく貢献している。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
なお、現時点で統計局ウェブサイトでは乗用車の上昇率が公表されていないが、6月時点では、引き続き乗用車の前年比上昇率寄与(2.3%ポイント)が大きい状況である。ただし、前月比では乗用車もマイナス寄与が大きくなっており(▲0.1%ポイント)、であり、物価上昇圧力は軽減していると見られる(図表9・10)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。ウェブサイトで中分類が公表されていないものは、より細かい品目(小分類)のデータを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年08月12日「経済・金融フラッシュ」)

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