2022年12月12日

ロシアの物価状況(22年11月)-3か月連続で前月比プラスに

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年同月比では低下したが、前月比では加速

12月9日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(22年11月)】
前年同月比は11.98%、市場予想1(12.10%)より下振れ、前月(12.63%)から低下(図表1)
前月比は0.37%、予想(0.40%)より下振れたが、前月(0.18%)から加速した

【コア指数2(22年11月)】
前年同月比は15.06%、前月(16.16%)から低下した(図表2)
前月比は0.18%、前月(0.03%)から加速した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:サービス物価は11%前後で横ばい圏での推移

11月のロシアのインフレ率は前年比で11.98%となり10月の12.63%から低下した。4月の17.83%をピークに7か月連続で低下したことになる。

大分類別に見ると、食料品が前年比で4月のピーク(20.48%)から11月には11.12%と大幅に低下したほか、財(非食料品)が3月のピーク(20.34%)から11月に13.36%まで低下した。一方、サービスは3月以降の高止まりが続き、11月は11.22%と横ばいでの推移となっている。

コア指数は前年比で11月は15.06%となり、総合指数と同様に4月(20.37%)をピークに減速しているものの、減速のスピードは総合指数と比較して緩やかな状況が続いている。

前月比では、総合指数が11月に0.37%と3か月連続のプラスの伸び率となり、伸び幅も拡大している。11月のコア指数も前月比0.18%と3か月連続のプラスとなっている(図表3)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
また、別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、5月下旬からゼロもしくはマイナスとなる時期が続いていたが、9月26日にプラスに転じ、その後11週連続でプラス圏の推移となっている。なお、12月に公共料金が引き上げられた影響で、直近12月5日の前週比は0.58%と歴史的にも高めの伸び率を記録している(図表4)。
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は11月には12.2%となった。期待インフレ率は3月(18.3%)をピークに急速に低下しており、直近では12%をやや上回る伸び率で横ばい推移している(図表5)。
品目別の上昇率では3(図表6)、11月は前年比で海外旅行サービス(66.66%)、洗剤(30.57%)、保険サービス(28.92%)、グラニュー糖(21.73%)の上昇率が高い。

前月比では、グラニュー糖(▲3.77%)、テレビ(▲2.32%)、植物油(▲2.16%)、穀物・豆(▲1.92%)の下落率が大きい一方、海外旅行サービス(6.87%)、青果物(5.58%)、その他サービス(3.03%)、旅客サービス(2.16%)の上昇率が高かった。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は海外旅行サービス(0.7%ポイント)、乳製品(0.5%ポイント)、住居・公益サービス(0.5%ポイント)、家庭サービス(0.5%ポイント)、アルコール飲料(0.4%ポイント)となった。一方、青果物(▲0.2%ポイント)は前年比でマイナス寄与となった。前月比上昇率の寄与では、青果物(約0.26%ポイント)が大きく物価を押し上げた要因となっており、青果物を除くと、11月の総合指数前月比伸び率はかなり限定的だった。この成果物の前月比上昇寄与が大きい状況は10月と同様だった。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
なお、現時点で統計局ウェブサイトでは品目別として11月の乗用車の上昇率が公表されていないが、10月時点では、引き続き乗用車の前年比上昇率寄与(1.9%ポイント)が特に大きい状況となっている(図表9)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年12月12日「経済・金融フラッシュ」)

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