2022年09月12日

ロシアGDP(2022年4-6月期)-前年同月比▲4.1%とマイナス成長に

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年同期比▲4.1%とマイナス成長

9月9日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
2022年4-6月期の前年同期比伸び率は▲4.1%、予想1(同▲4.0%)を下回り、前期(同3.5%)からマイナスに転じた(図表1・2)

(図表1)ロシアの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ロシアの実質GDP成長率(供給項目別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:第二次産業や金融以外のサービス業の落ち込みが目立つ

ロシアの22年4-6月期の実質GDP伸び率は▲4.1%となり、8月12日に公表されていた予備推計値(▲4.0%)から小幅に下方修正された。また、季節調整系列の前期比は▲1.9%(年率換算▲7.6%)となり、コロナ禍前の水準(19年10-12月期)を再び割り込んだ。前期比では、クリミア併合後の景気後退期ボトム(15年1-3月期の前期比▲1.0%)は下回ったものの、コロナ禍後のボトム(20年4-6月期の前期比▲8.5%)と比較すると落ち込み幅は限定的となった。

執筆時点では需要別のデータが未公表であるため、以下では公表されている産業別データなどを確認していく。

産業別の前年同期比は、第一次産業と第三次産業(金融・不動産)はプラス成長だったが、第二次産業および第三次産業(その他)はマイナス成長となった(図表3・4)。4-6月期は特に、第三次産業の「小売・卸売業」「水道業」「その他」「自家利用2」、第二次産業の「製造業」の落ち込みが目立った。その他、4-6月期は「税」負担(補助金は控除)が大幅に減少している。また、前期比に関しても大きく落ち込んだ業種は前年同期比で落ち込んだ業種とほぼ同じだが第二次産業の「鉱業」が前期比▲5.2%となり、生産の急鈍化が見られる点が特徴的と言える。
(図表3)ロシアの実質GDP成長率(22年4-6月期)
4-6月期の名目成長率は前年同期比12.1%で4-6月期の27.8%から大幅に低下した。GDPデフレータ伸び率も前年同期比17.0%となり、4-6月期の23.4%から大幅に加速している(図表5)。
(図表4)ロシアの実質GDPの動向(供給項目別)/(図表5)ロシアの名目および実質成長率
4-6月期のロシア経済は、大幅なマイナス成長となり、これはウクライナ侵攻後に西側諸国から受けた制裁の影響が顕在化したものと考えられる。
(図表6)ロシアの実質GDP成長率 一方、7月以降の統計データでは、生産や消費(小売売上高)などの主要指標が最悪期を脱した形となり、経済発展省が公表する月次GDPの推計値は、7月の成長率で▲4.3%と、6月の▲4.9%からマイナス幅の縮小を見積もっている(図表6)。

戦争が長期化するなか、年末年始にかけては欧州のロシア産石油に対する禁輸措置の猶予期間終了や、G7で合意された石油価格への上限設定など、制裁の経済への影響がさらに強まる見込みである。

今年の冬は、ロシア経済の先行きを大きく左右する時期と見られるだけに、引き続き今後の状況やデータが注目される。
 
2 自家利用の財・サービス。便宜的に第三次産業(その他)に含めた。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2022年09月12日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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