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- ユーロ圏消費者物価(22年11月)-エネルギー価格主導で総合指数が減速
2022年12月01日
1.結果の概要:総合指数が減速
11月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)は11月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
【総合指数】
・前年同月比は10.0%、市場予想1(10.4%)を下回り、前月(10.6%)から減速(図表1)
・前月比は▲0.1%、予想(0.2%)を下回り、前月(1.5%)からマイナスに転じた
【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数1】
・前年同月比は5.0%、予想(5.0%)と同じで、前月(5.0%)から横ばい(図表2)
・前月比は▲0.0%、前月(0.6%)から減速した
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。
2.結果の詳細:エネルギー価格の下落が目立つが、価格水準は依然として高い
22年11月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で10.0%となり、10月の10.6%から減速した。前年同月比での減速は21年6月以来となる3。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は5.0%と最も高い伸び率を記録した10月から横ばいだった。
以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。
まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が9月5.5%→10月6.1%→11月6.1%、「サービス」(エネルギーを除く)が9月4.3%→10月4.3%→11月4.2%となり、いずれも横ばい圏で推移した(前掲図表2)。品目別には10月までのデータとなるが、対面サービス関連の娯楽業(8月4.8%→9月4.6%→10月4.9%)がやや加速する一方、外食・宿泊業(8月8.1%→9月8.5%→10月8.4%)は若干だが減速した。また、光熱費(8月19.7%→9月21.1%→10月23.2%)が大幅に加速している。前年同月比寄与度では、「財」が1.56%ポイント程度、「サービス」が1.75%ポイント程度だった。
コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で9月40.7%→10月41.5%→11月34.9%となり、大幅に減速した。前月比でも▲1.9%(10月は6.2%)とマイナスとなっている。上流のエネルギー価格の高騰が落ち着いたことで、消費者物価のエネルギー部分の伸びが抑制された可能性があるが、価格水準は依然として高い(図表3)。エネルギーの前年同月比寄与度は3.76%ポイント程度(10月は4.44%ポイント)と見られる(前掲図表1)。
以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。
まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が9月5.5%→10月6.1%→11月6.1%、「サービス」(エネルギーを除く)が9月4.3%→10月4.3%→11月4.2%となり、いずれも横ばい圏で推移した(前掲図表2)。品目別には10月までのデータとなるが、対面サービス関連の娯楽業(8月4.8%→9月4.6%→10月4.9%)がやや加速する一方、外食・宿泊業(8月8.1%→9月8.5%→10月8.4%)は若干だが減速した。また、光熱費(8月19.7%→9月21.1%→10月23.2%)が大幅に加速している。前年同月比寄与度では、「財」が1.56%ポイント程度、「サービス」が1.75%ポイント程度だった。
コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で9月40.7%→10月41.5%→11月34.9%となり、大幅に減速した。前月比でも▲1.9%(10月は6.2%)とマイナスとなっている。上流のエネルギー価格の高騰が落ち着いたことで、消費者物価のエネルギー部分の伸びが抑制された可能性があるが、価格水準は依然として高い(図表3)。エネルギーの前年同月比寄与度は3.76%ポイント程度(10月は4.44%ポイント)と見られる(前掲図表1)。
国別のHICP上昇率では、11月は前年同月比で19か国中4か国が加速、15か国が減速した(図表5)。11月はオランダの減速が目立ち4、ユーロ圏全体のインフレ率を▲0.3%ポイント程度引き下げたと見られる。また、前月比では19か国中10か国がプラスの伸び率だった(図表6)。
3 厳密には(小数点第2位以下も考慮すれば)、22年4月(前年同月比7.4%)が22年3月(同7.4%)から若干減速した。
4 オランダ統計局(CBS)はエネルギー価格が大幅に低下したことを指摘するとともに、エネルギー価格は毎月の新規契約から算出されており、既存契約を含む実際の支払価格と比較して、これまで価格上昇が過大に評価されていた点を補足している。
3 厳密には(小数点第2位以下も考慮すれば)、22年4月(前年同月比7.4%)が22年3月(同7.4%)から若干減速した。
4 オランダ統計局(CBS)はエネルギー価格が大幅に低下したことを指摘するとともに、エネルギー価格は毎月の新規契約から算出されており、既存契約を含む実際の支払価格と比較して、これまで価格上昇が過大に評価されていた点を補足している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年12月01日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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