2023年02月02日

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■要旨

2023年度政府予算案が昨年末、閣議決定され、1月23日に召集された通常国会に提出された。一般会計の規模は対前年度当初比で6.3%増の114兆3,812億円となり、11年連続で過去最大を更新した。ウクライナ情勢などを踏まえて防衛関係費が膨らんだことが歳出を押し上げる要因となった。

こうした中、歳出の約3分の1を占める社会保障関係予算は対前年度当初比1.7%増の36兆8,889億円となった。毎年見直される薬価の削減などを通じて、約1,500億円の自然増を抑制した一方、子育て関連予算が増えたことで、こちらも過去最高を更新した。

しかし、防衛関係費の予算確保が焦点となり、例年に比べると「主役」を奪われた形となった。こうした中、毎年見直されることになった薬価に関して、与党も絡んだ攻防が見られたほか、出産育児一時金の引き上げなど、子育て関係予算の見直しや医療保険制度改革の論議が進んだ。

さらに、昨年末の大臣合意では、マイナンバーカードと健康保険証を一体化させる「マイナ保険証」の関係でも制度改正が決まった。その際には、厚生労働省の審議会で十分に議論されないまま、大臣合意で審議会の「外堀」を埋めるような展開が継続し、関係者の間では不満も示された。

本稿では社会保障関係費を中心に、2023年度政府予算案の概要や制度改正の内容などを考察する。さらに、子育て関係予算の拡充に加えて、2024年度に控えた医療・介護の制度改正など今後の論点を考える。

■目次

1――はじめに~2023年度の社会保障関係予算を分析する~
2――2023年度予算案の概況
  1|歳出と歳入の概況
  2|歳出を押し上げた防衛関係費
  3|多額の予備費は2023年度も継続
3――社会保障関係予算の概況
4――社会保障関係予算の概要(1)~子育て関係予算の拡充~
5――社会保障関係予算の概要(2)~マイナ保険証などの診療報酬改定~
  1|薬価改定の内容
  2|マイナ保険証の診療報酬改定
6――社会保障関係予算の概要(3)~その他の論点~
  1|医療・介護保険改革の影響
  2|自治体向け基金、交付金の見直し
7――社会保障予算の今後の論点と展望(1)~子育て関係予算の充実~
8――社会保障予算の今後の論点と展望(2)~2024年度に控えた医療・介護同時改正~
  1|医療関係の制度改正
  2|介護関係の制度改正
9――社会保障予算の今後の論点と展望(3)~バイパスされる審議会~
10――おわりに~社会保障・税の一体的な議論は不可欠~
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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【2023年度の社会保障予算を分析する-薬価改定で攻防、審議会の「外堀」を埋める動きは継続】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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