2023年01月30日

堅調な米個人消費は持続可能か-金融引締めの継続に伴う金融環境の引締まりや、労働市場の減速から個人消費の伸びは鈍化へ

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 実質GDPにおける個人消費は、22年10-12月期が前期比年率+2.1%となった。個人消費はインフレ率が一時およそ40年半ぶりとなるなどインフレが深刻化していることに加え、インフレ抑制のためのFRBによる大幅な金融引締めに伴う金融環境の引締まりなどの逆風にも関わらず、3期連続で2%近辺の堅調な伸びを維持した。
     
  2. 個人消費が堅調な要因は労働市場で雇用増加が続いているほか、労働需給の逼迫を背景に賃金の伸びが堅調となっていることに加え、良好な家計のバランスシートや過剰貯蓄などが挙げられる。
     
  3. さらに、秋口以降のインフレ低下に伴う金融環境の緩和もあって消費者センチメントが改善していることも足元で個人消費の追い風となっている。
     
  4. もっとも、10-12月期の個人消費を仔細にみると11月から2ヵ月連続で減少に転じており、年末にかけて個人消費が減速した可能性が示唆されている。
     
  5. FRBはインフレ抑制のために金融引締めを継続する姿勢を明確にしており、金融環境の引締まりが見込まれるほか、最近の人員削減報道にみられるように労働市場の減速に弾みがつくとみられることから、今後の個人消費の減速は不可避だろう。

 
(図表1)個人消費支出(主要項目別)および可処分所得
■目次

1.はじめに
2.米個人消費の動向
  (10-12月期の個人消費)3期連続で堅調な伸びが持続
  (個人消費への逆風)インフレ高進、FRBによる金融引締めに伴う金融環境の大幅な引締まり
  (個人消費が堅調を維持している要因(1))雇用増加、堅調な賃金の伸び
  (個人消費が堅調を維持している要因(2))良好な家計のバランスシート、過剰貯蓄
  (個人消費が堅調を維持している要因(3))インフレ低下、消費者センチメントの底入れ
  (個人消費は年末に向けて減速)月次データは個人消費が年末にかけて減速した可能性を示唆
3.今後の見通し
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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