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消費者の節電意識と行動~高齢層ほど熱心、若年層の方が消極的
生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
1――はじめに
そこで本稿では、消費者の節電に対する意識と行動を探るため、ニッセイ基礎研究所が昨年12月21~27日に実施したインターネット調査「第11回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」を用いて、消費者全体の状況を概観し、属性別に特徴を見ていきたい。
2――節電への取組内容と動機
3――属性別にみた節電意識と節電行動の特徴
ここからは、回答者の属性別に意識と行動の特徴をみていきたい。まず性別にみると、節電に取り組む動機自体に男女の違いはなかったが、実際に自身が取り組む内容を見ると、「電気の消し忘れに注意」や「重ね着をして暖房器具の設定温度を下げる」など、日常生活上の心がけでできるものは、女性の方が男性よりも回答率が高かった(図表4)。家計管理を担うのが夫より妻が多いためか、女性の方が男性よりも、節約に直結する節電に熱心だと言える。「冷蔵庫の開け閉めを早くしたり、設定温度を上げたりする」についても女性の方が高く、家事(特に炊事)の分担が、夫よりも妻の方が多いことと関連していると考えられる。
次に年代別にみると、年代が上がるほど各種の節電の取組への回答率が高かった(図表5)。特に70歳代では、ほとんどの取組で、全体よりも回答率が高かった。60~70歳代は、物価高に対して他の年代よりも敏感で、買い控えや貯蓄の切り崩しなどの防衛策を講じる割合が多いことが分かっており1、節電行動に対しても同じように積極的であることが分かった。また、70歳代で「重ね着をして暖房器具の設定温度を下げる」は7割近いが、高齢になると、例えば入浴後のヒートショックなどの心配もあり、体調管理を妨げない程度にとどめるよう、注意が必要だろう。
これに対して20~30歳代は、多くの取組項目で全体よりも回答率が低かった。同調査では、20歳代のうち1割を学生が占めることや、20歳代の7割超が未婚(独身)であることから、親と同居していたり、光熱費を親が負担していたりする人もいるだろう。ただし、30歳代は未婚(独身)の割合は4割、学生は0%で、全体と大きな差はないのに、20歳代同様に、節電行動は全体より消極的である。若年層が節電に対して相対的に消極的であることには、他にも要因があると考えられる。
節電動機についても、若年層の方が回答率が低く、高齢層の方が高い傾向があることが分かった。「電気代の節約のため」は全年代で9割前後に上り、20歳代でも8割だったが、全体と比べると差がある。「電力不足に陥って、大規模停電が発生するのを防ぐため」も、20~40歳代では全体を下回り、60~70歳代では全体を上回った。「温室効果ガス削減のため」も30歳代では全体を下回ったが、70歳代では全体を10ポイント以上、上回った。
これまで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ氏への注目や若者からの反響などから、若年層は、気候変動などの環境問題に対する意識が高いという見方もあったが、節電に関して言えば、寧ろ若年層の方が、温室効果ガス削減の意識は低いことが分かった。その明確な理由は本調査からは明らかにできないが、20~30歳代では「節電のために、家庭でどのようなことに取り組むお考えですか」との設問に対して「分からない」との回答率が全体よりも高かった。若年層は、働いて家計を担ったり、支出を管理したりする経験が浅いことや、エネルギーは、可視的で自ら選択可能なモノやサービスに比べて、消費を実感しづらいことから、理解が不足している可能性がある。
1 久我尚子(2022)「物価高進行下の消費者の状況-低収入層や子育て世帯で負担感強、高収入層は海外ブランド品や不動産で実感」(基礎研レポート)
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- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
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