コラム
2023年01月17日

どんな方式でも落札額は同じ!?-オークション理論「収入同値定理」の考え方

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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◇ 価格下降式と一位価格には、「勝者の呪い」 がつきまとう

収入同値定理によって、条件が成り立てば、平均的に、これら4つのオークションの落札額は同じであると言える。出品する売り手の側からすれば、どのオークションをとっても受け取れる金額は平均的に同じということになる。
 
ただし、買い手から見た場合には、やや事情が異なってくる。オークションの種類によっては、買い手に悩みが生じることがあるためだ。
 
価格下降式オークションと一位価格オークションでは、落札者が入札した最高額がそのまま支払額となる。そうすると、落札した“勝者”は、こんなことを考えてしまいがちだ。
 
「今回のオークションでは、自分の評価額が最も高かったので、落札できた。他の人はみな、出品されたものを自分より低く評価していたことになる。出品されたものには、なにか、自分が見落していた欠陥があるのかもしれない…。自分もその欠陥に気付いていたとしたら、もう少し低い金額で入札しても落札できていたのではないか? そうすれば、支払いをもっと低く抑えることができたかもしれない…。」
 
この後悔は、「勝者の呪い(winner's curse)」と呼ばれている。
 
価格競上げ式オークションと二位価格オークションでは、こうした後悔は生じない。自分の評価額でそのまま入札できるためだ。もしこれらのオークションで落札できずに“敗者”となった場合でも「自分の評価額を入札して、やれるだけのことはやった。精一杯、頑張った。負けて悔いなし。」という、ある種の爽快感が味わえる仕組みと言える。
 
今度、ネットオークションなどに参加する機会があったら、オークションの仕組みや、参加者の気の持ちようについて、少し考えてみるのもよいだろう。

(参考文献)
 
「ヤフオク!の経済学-オンラインオークションとは」土橋俊寛著(日本評論社, 2018年)
 
「1位価格オークションの解法」宮川栄一 (「経済学・経営学 学習のために」(国民経済雑誌別冊),平成26年度後期号, 神戸大学経済経営学会)
http://www2.kobe-u.ac.jp/~emiya437/publication_j.html
 
「独立一様分布オークションについての考察」大石英貴 (九州工業大学大学院情報工学研究院紀要, 人間科学篇, 第27巻 pp37-53)
http://hdl.handle.net/10228/5231
 
「ネットオークションにおける情報と入札行動」永星浩一 (福岡大学商学論叢, 第55巻第1号)
https://fukuoka-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1611&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1
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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

(2023年01月17日「研究員の眼」)

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