コラム
2023年01月12日

外国債券ファンドの復権は?~2022年12月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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インデックス型の外国株式ファンドに過去最大の資金流入

2022年12月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、主として国内債券を投資対象とするもの以外の資産クラスのファンドに資金流入があった【図表1】。12月は外国株式ファンドだけでなく国内株式ファンドや外国債券ファンドにもまとまった資金流入があり、ファンド全体の流入額が1兆300億円と11月の5,500億円からほぼ倍増した。このようにファンド全体への資金流入が1兆円を超えたのは、2021年12月以来のことである。
【図表1】 2022年12月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
まず、12月は外国株式ファンドに4,300億円の資金流入があり、11月の3,600億円から700億円増加した。アクティブ型の外国株式ファンドの販売は12月も600億円の資金流入と11月の700億円からやや減少し、相変わらずあまり振るわなかった。一方でインデックス型の外国株式ファンドには3,700億円と11月の2,800億円から900億円も多く資金流入があり、インデックス型が外国株式ファンドの資金流入を押し上げた。

このように12月はインデックス型の外国株式ファンドの資金流入が過去最大となり、インデックス型の外国株式ファンドの販売が特に好調であった。米国株式など外国株式自体が下落し、さらに月初に1ドル139円前後だったのが月末には133円を下回るなど急激に円高も進行し、インデックス型を含む多くの外国株式ファンドの基準価額が大きく下落した。そのような中、積立投資などの定期的な買付だけでなく、年末ということも相まって積極的に価格が下落したインデックス型の外国株式ファンドを追加購入した人が多かったようだ。
 
個別でみても12月に資金流入が大きかったインデックス型の外国株式ファンド4本(【図表2】赤太字)すべてで11月から資金流入が増加した。特に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の増加が他の米国株式の3本より顕著であった。米国株式ファンドの販売の方が投資環境の影響を受けやすい傾向があることを踏まえると、12月は投資環境以上につみたてNISAなどの駆け込み買付によって資金流入が膨らんでいたのかもしれない。
【図表2】 2022年12月の推計純流入ランキング
なお、インデックス型の外国株式ファンドには2022年1年間で3兆2,400億円の資金流入があった。2022年は2020年や2021年のように2021年の2兆4,600億円から倍増とはいかなかったが、それでも3年連続で資金流入が過去最大を更新した。個別でみてもアクティブ型の外国株式ファンドが2022年後半にあまり売れなくなったこともあり、一部のインデックス型の外国株式ファンド(赤太字)の存在感が増した1年であった【図表3】。
【図表3】 2022年の純流入ランキング
また、12月は外国株式ファンドだけでなく国内株式ファンドにも2,200億円の資金流入があり、そのうち1,900億円がインデックス型への資金流入であった。インデックス型の国内株式ファンドにも つみたてNISAなどの駆け込み買付が多少はあったかもしれないが、大部分は株価下落に伴うタイミング投資だったと推測される。日経平均株価が一時2万8,000円台にあったのが月末に2万6,000円割れ目前になるなど月中に2,000円以上下落する中、個人投資家の逆張り投資は健在であったようだ。

外国債券ファンドの売りは2022年に一巡

さらに12月は外国債券ファンドにも1,800億円の資金流入があり、11月の700億円から増加した。外国債券ファンドへの資金流入のうち1,000億円が12月に新設されたヘッジありの外国債券ファンド(【図表2】緑太字)への資金流入であった。それでも12月は既設ファンド(黄棒、黄緑棒)にもヘッジなしに400億円、ヘッジありに200億円、合計で600億円の資金流入があった【図表4】。
 
既設のヘッジなしの外国債券ファンド(黄棒)が3カ月連続で流入超過となるなど、2018年から続いていた外国債券ファンドの売却は、2022年後半に一巡したといえそうである。2022年に米国を中心に先進国債券の利回りが復活し、外国債券ファンドの投資妙利が出てきただけに、これから外国債券ファンドが復調してくるのかに注目したい。
【図表4】 外国債券ファンドの資金流出入
ただ、この12月だけでなく2020年以降、たびたび新設(緑棒)された限定追加型のヘッジありの外国債券ファンドが売れてきたが、ヘッジありの外国債券ファンドはこれから注意が必要である。外国債券の利回りだけでなく為替ヘッジのコストも2022年に大きく上昇したためである【図表5】。特にドル(青線)のヘッジ・コストの上昇がすさまじく、足元だと年率で5%もかかってしまう。これから短期的にコスト負けするヘッジありの外国債券ファンドが続出してくるかもしれない。
【図表5】 為替ヘッジのコストの推移

一部の新興国関連ファンドが好調

12月に高パフォーマンスであったファンドをみると、一部の新興国関連ファンド(赤太字)やテーマ型の国内株式ファンド(青太字)が好調であった【図表6】。トルコ株式ファンドについては12月だけなく2022年1年通しても好パフォーマンスで、この1年で基準価額がほぼ倍になった【図表7】。その他、2022年は資源関連ファンド(青太字)も総じて好調であった。
【図表6】 2022年12月の高パフォーマンス・ランキング
【図表7】 2022年の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2023年01月12日「研究員の眼」)

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