2022年12月27日

回復する訪日外客数、属性の変化とエリア別稼働率の動向~2022年11月 ホテル客室稼働率、訪日外客数

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

10月11日からの個人旅行目的でも入国が解禁され、2022年11月の訪日外客数は大きく回復している。今後も訪日外客数は、長期的な回復が期待できる。このため、国内不動産投資市場では、ホテルへの投資需要が一層高まっている。
 
主要都市部の物件が投資適格となりやすいオフィスやマンションと異なり、ホテルへの不動産投資は、観光客が好んで良く行く観光地が投資適格となり、需要者である観光客の属性や嗜好の影響を受ける。2019年において、国籍・地域別、訪日回数別では、「初めて訪日する中国人」が最も多く、次いで「韓国人のリピーター(訪日2回目以上)」、「台湾人のリピーター」が多かった。しかし、繰り返されるゼロコロナ政策や感染拡大から、現時点では中国からの訪日はまだ見込めない状況が続いている。
 
2022年11月の訪日外客数の多い上位10か国・地域をみると、コロナ禍前から多かった「韓国人、台湾人、香港人のリピーター」に加えて、「様々なエリアから初めて訪日する人」が新たな軸に加わったのではないかと考える。現在来訪している訪日外国人は、コロナ禍前の王道とは別の体験を求めていると考えられ、新たなトレンドとこれに応える市場が生まれる可能性があるのではないだろうか。
 
2022年11月の客室稼働率は、10月11日の全国支援割の開始による効果で国内観光客が増加したことに加え、初めて訪日する外国人観光客の増加により、ウェイトが大きい東京や大阪がけん引して、全国的に稼働率が上昇し、コロナ前近くまで回復している。他に急速に回復しているエリアには、京都府を含む近畿、福岡を含む九州がある。一方、あまり回復していないのは北海道である。中華圏の旧正月(春節)のある1月、タイの旧正月のある4月に回復が期待される。
 
2023年は、初めて訪日する人の外国人客の増加から、アクセスが良く、知名度が最も高い東京都の強さが目立つ年になると考える。また、訪日外国人の属性の多様化は、将来を見据えると、人気の観光地や施設の分散や評価の多様化につながるため喜ばしい現象であると考えている。観光客の心に響くイメージの定着に成功すれば、リピーターや新たな顧客の誘引に貢献し、長く日本の観光市場を盛り上げることができるのではないだろうか。

■目次

・国境開放により訪日外客数が増加
・コロナ禍前とは訪日外国人客を構成する国・地域が異なっている
・訪日する人の属性が多様化し、初めて訪日する人が増加している
・2022年11月の客室稼働率の動向
・2023年は東京が強いが地方にもチャンスが多い
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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