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- 首都圏住宅市場(マンション・戸建て)の動向~価格高水準も、取引戸数が減速、在庫は増加
2022年12月09日
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在庫戸数も増加している
ただし、2022年10月の新築分譲戸建ての在庫戸数は13,056戸(前年同月比+54.7%)と、2022年2月以降、急速に増加しており、実需を超えた戸数が供給された可能性がある。
新築の定義は、「建物完成から1年かつ、今まで居住者がいないこと」である。建物完成から1年を超えれば新築ではなくなり、新築としての価格よりも価値が減少する。新築でも中古でもない3ため、数値として把握するのは難しい。しかし、在庫戸数が急増した2022年2月から1年を経過する2023年2月ごろまで在庫の増加が続けば、建築後1年を経過した分譲戸建てが顕在化し始めると思われる。
供給者にとっては、新築住宅には1年という期限があるため中古住宅よりも「早く売却したい」という気持ちになりやすい。購入希望者にとっては交渉の余地が生じる。今後、新築分譲戸建ての価格の上昇には歯止めがかかる可能性があるのではないだろうか。
また、2022年10月の中古マンションの在庫戸数は40,300戸(前年同月比+14.4%)と9カ月連続で増加した。在庫戸数は、年単位で増加が続くことが多く、現在の勢いも強い(図表7)。
新築の定義は、「建物完成から1年かつ、今まで居住者がいないこと」である。建物完成から1年を超えれば新築ではなくなり、新築としての価格よりも価値が減少する。新築でも中古でもない3ため、数値として把握するのは難しい。しかし、在庫戸数が急増した2022年2月から1年を経過する2023年2月ごろまで在庫の増加が続けば、建築後1年を経過した分譲戸建てが顕在化し始めると思われる。
供給者にとっては、新築住宅には1年という期限があるため中古住宅よりも「早く売却したい」という気持ちになりやすい。購入希望者にとっては交渉の余地が生じる。今後、新築分譲戸建ての価格の上昇には歯止めがかかる可能性があるのではないだろうか。
また、2022年10月の中古マンションの在庫戸数は40,300戸(前年同月比+14.4%)と9カ月連続で増加した。在庫戸数は、年単位で増加が続くことが多く、現在の勢いも強い(図表7)。
中古マンションの場合、近年では元の所有者から不動産業者がマンションを買い取り、内装や水回りなどの設備を新築同様に更新してから、設備相応の値段で購入希望者に販売するのが通常である。販売価格が購入希望者の予算以内であればよいが、過剰な設備投資などにより販売価格が購入希望者の予算を上回ってしまうこともある。上昇し続けてきた中古マンション価格であるが、購入希望者が「適当と考える水準より価格が高い」と考え、成約に至らなかった物件が市場に積みあがってきているのだろう。
なお、新築マンションについては、2022年10月の販売在庫4は4,945戸(前月から+148戸、前年同月から▲431戸)で、前年を下回る月が25カ月連続し、完成在庫5も2,343戸と前年同月から▲405戸減少している。開発用地価格の高騰などから新築マンションの供給量自体が減ったために在庫戸数も減っており、図表3の初月契約率が70%以上を回復したことも併せると、新築マンション市場では価格は高水準で安定しているとみる。
3 「新古住宅」等の通称で呼ばれ、人が住んだことはないが、新築にはあたらない。
4 建物が完成する前に売り出されたマンションのうち、未だ成約せず在庫となっている戸
5 建物が完成したマンションのうち、未だ成約せず在庫となっている戸
なお、新築マンションについては、2022年10月の販売在庫4は4,945戸(前月から+148戸、前年同月から▲431戸)で、前年を下回る月が25カ月連続し、完成在庫5も2,343戸と前年同月から▲405戸減少している。開発用地価格の高騰などから新築マンションの供給量自体が減ったために在庫戸数も減っており、図表3の初月契約率が70%以上を回復したことも併せると、新築マンション市場では価格は高水準で安定しているとみる。
3 「新古住宅」等の通称で呼ばれ、人が住んだことはないが、新築にはあたらない。
4 建物が完成する前に売り出されたマンションのうち、未だ成約せず在庫となっている戸
5 建物が完成したマンションのうち、未だ成約せず在庫となっている戸
中古マンション、新築分譲戸建ての購入希望者は様子見してもよい
現在の売買市場においては、開発用地の価格が高く、建築費についても上昇傾向である6。投資額が大きく膨らんでいるため、住宅の供給者が価格を下げることは容易ではない。一方、不動産は一つとして同じものがなく、気に入った住宅の購入は、価格的に多少無理をしたとしても満足が得られやすい。特に新築マンションについては人気が高い上に、供給量が少なく、在庫戸数も一定で安定していることから、需要者の不足により市場が崩れるということはまずないだろう。
一方、長期金利の上昇、コストプッシュによる物価の上昇、賃金の低迷など、住宅市場を減速させる可能性のある複数のマクロ経済要因が生じている。購入希望者層の可処分所得の減少は、ローンの借入可能額やローン返済計画を通じて住宅の購入予算を引き下げ、住宅市場の価格上昇傾向を転換させる可能性があり、今後慎重に見ていく必要があるだろう。
首都圏住宅市場全体では取引戸数が減少し、新築マンション以外の市場では在庫戸数が増加している。特に新築分譲戸建ての在庫戸数の増加が続いた場合には、新築の期限である建築後1年を前に、売却価格の見直しや減額キャンペーンなど、今までにない販売方法に変化する可能性がある。売買は交渉事であり、全ての住宅で容易に価格が下がるわけではない。しかし、「住宅は購入したいが、どうしても買いたいという住宅に出会えていない」という人は、しばらく様子見という選択肢もありうる時期ではないだろうか。
一方、長期金利の上昇、コストプッシュによる物価の上昇、賃金の低迷など、住宅市場を減速させる可能性のある複数のマクロ経済要因が生じている。購入希望者層の可処分所得の減少は、ローンの借入可能額やローン返済計画を通じて住宅の購入予算を引き下げ、住宅市場の価格上昇傾向を転換させる可能性があり、今後慎重に見ていく必要があるだろう。
首都圏住宅市場全体では取引戸数が減少し、新築マンション以外の市場では在庫戸数が増加している。特に新築分譲戸建ての在庫戸数の増加が続いた場合には、新築の期限である建築後1年を前に、売却価格の見直しや減額キャンペーンなど、今までにない販売方法に変化する可能性がある。売買は交渉事であり、全ての住宅で容易に価格が下がるわけではない。しかし、「住宅は購入したいが、どうしても買いたいという住宅に出会えていない」という人は、しばらく様子見という選択肢もありうる時期ではないだろうか。
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2022年12月09日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1853
経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
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