2022年12月02日

ブラジルGDP(2022年7-9月期)-けん引役の消費・投資がいずれも減速

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:プラス成長を維持しているが、伸び率は減速

12月1日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2022年7-9月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は3.6%、市場予想1(3.7%)を下回り、前期(3.7%)からやや減速した(図表1・2)。
前期比伸び率(季節調整値)は0.4%、予想(0.6%)を下回り、前期(1.0%)から減速した。

(図表1)ブラジルの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ブラジルの実質GDP成長率(産業別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:消費・投資いずれも減速

22年7-9月期の実質GDP伸び率は前期比0.4%(季節調整値、年率換算1.6%)で、5四半期でのプラス成長を記録した。ただし、伸び率は22年1-3月期をピークに減速している(22年1-3月期:1.3%、4-6月期:1.0%、7-9月期:0.4%)。22年7-9月期のコロナ禍前(19年10-12月期)比は4.5%となった(図表4・5)。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が1.0%(前期:2.1%)、政府消費が1.3%(前期:▲0.9%)、投資2.8%(前期:3.8%)、輸出が3.6%(前期:▲2.8%)、輸入が5.8%(前期:8.7%)となった。4-6月期に続き内需(消費や投資)が成長のけん引役となったが、伸び率はいずれも減速した。10月総選挙を前に8月から低所得者向けの給付額を400レアルから600レアルに増額するなど家計支援策も講じられたが、高インフレ・高金利による景気鈍化圧力も強まっていると見られる。なお、コロナ禍前との対比では、個人消費が3.5%、政府消費が2.8%、投資が20.2%、輸出が8.0%、輸入が9.6%で投資の力強さが目立つ(図表4)。
(図表3)業種別のGDP伸び率
(図表4)ブラジルの実質GDPの動向(需要項目別)/(図表5)ブラジルの実質GDPの動向(供給項目別)
産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3・5)、第一次産業は、関連作物(サトウキビ・キャッサバ等)の生産減の影響を受けて前期比▲0.9%(前期:0.1%)となった。第二次産業では、水不足の緩和で4月以降の電気料金を引き下げたことが引き続き生産の押し上げ材料となり、同0.8%(前期:1.7%)だった。第三次産業も同1.1%(前期:1.3%)と引き続き高めの伸び率を記録した。第三次産業では情報通信(前期比3.6%)が高成長を記録する一方、モノからサービス需要へのシフトにより卸・小売(前期比▲0.1%)は小幅ながらマイナスに転じた。
(図表6)ブラジルの輸出入物価と交易利得 22年7-9月期の名目成長率は前年同期比12.8%(前期:13.3%)となった。名目と実質成長率の差(デフレータに相当)は9.2%(前期:9.6%)と低下している。また、7-9月期の交易条件はわずかではあるが、4-6月期に続きやや改善した(図表6)。

ブラジルでは、10月の大統領選挙で左派のルラ氏が現職のボルソナロ氏を破った。今後は来年に発足する新政権の舵取りも注目される。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年12月02日「経済・金融フラッシュ」)

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