コラム
2022年11月30日

60代男性はアンコンシャス・バイアスが低い?-内閣府の調査結果から

経済研究部 取締役 部長 宮垣 淳一

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2022年11月8日、内閣府男女共同参画局が「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」に関する調査結果を発表した1。すぐにネットニュースやテレビで取り上げられ、「『男性は仕事をして家計を支えるべき』男女ともまだ半数」等と報道された。

さらにタイトルに続いて「いずれの回答でも男性では60代が最も低い結果となっています。」というコメントが報道された。アンコンシャス・バイアスだから、高い方が悪いはず、男性では60代が最も良い?!ここで私(60代男性)のアンコンシャス・バイアスが働いて、「よくわからないが、きっと60代男性の方が若い人より差別的だという結果だったのだろう。」と、その時は考えた。ただ、どうもすっきりしないので、内閣府の発表資料を確認することにした。

この調査は昨年が第1回で今年が2回目ということだ。第1回の発表資料に調査の目的は「アンコンシャス・バイアスについて、気づきの機会を提供し、理解を促すことでその解消を図る。」とある。調査の方法としては、性別役割、その他性別に基づく思い込みの項目について、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の4段階で聞いている。

調査結果を確認していくと「そう思う」と「どちらかというとそう思う」の回答の合計値が「無意識の思い込みがある」の結果数値となっている。高い方が「思い込みが強く、性別バイアスが強い」を示していることになる。私の「60代男性の方が差別的でしょ」は間違っていたようだ。では本当に60代男性の方が20代男性より性別に関するアンコンシャス・バイアスが低いのか。

まず男女を合わせて「そう思う」または「どちらかというとそう思う」の割合が最も高かった「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」について見てみよう。この項目については、下表の通り、60代男性の方が20代男性よりバイアスが強いという結果になっている。
性別役割に対する考え
では、ニュースの「いずれの回答でも男性では60代が最も低い結果となっています。」は何を意味しているのか?発表資料を詳しく見ると、「職場の役割分担に関する項目において、20代男性で「そう思う」又は「どちらかというとそう思う」と回答した割合が高いものが多くみられる。」と書かれている。その例として挙げられているのが、下表の5項目だ。
職場項目における性別役割意識
いずれの数値も先ほどの「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」の50%前後の数値に比べれば低い数値だが、明確に20代男性の値が60代男性の値を上回っている。なるほど、これがニュースにあった「いずれの回答でも男性では60代が最も低い結果となっています。」の正体のようだ。

ここまででわかったことは、
 
  • 一般的な項目では男性の中で60代男性の方が20代男性より、「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」が強い。
  • ただ、職場に関連する項目では、20代男性の方が60代男性よりも思い込みが強い。

ここからはあくまで筆者の推測であるが、職場において男女を平等に扱う動きが加速してきた中で、若い世代の男性の方が、同世代女性との競争にさらされることや同じ業務を同じ立場でするケースが多く、こうした結果が出てきてしまったのではないだろうか。

社会や企業の考え方、行動が大きく変化する中での過度期的な症状と思いたいが、女性活躍推進を進める中で職場における軋轢・摩擦が生じている可能性を示唆している。調査結果をきっかけにアンコンシャス・バイアスの解消が進むことを期待するが、バイアスが解消していくまでの間に職場において差別的行動・言動が生じないように注意が必要だ。
 
 

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経済研究部   取締役 部長

宮垣 淳一 (みやがき じゅんいち)

研究・専門分野
経済研究部統括

経歴
  • 【職歴】
    1983年 日本生命保険相互会社入社
    2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
    2013年 日本生命保険相互会社 支配人
    2014年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部部長
    2020年4月 専務取締役経済研究部部長
    2024年4月より現職

(2022年11月30日「研究員の眼」)

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