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マルクスからESGへ
経済研究部 専務取締役 部長 宮垣 淳一
こうして20世紀後半には、共産主義、社会主義教育を受けてきた東側の人々が西側諸国の状況を知ると、その経済発展ぶりに驚くと同時に、教えられてきた資本主義の欠点、すなわち労働者の搾取や公害にまみれた都市などがほとんど存在しないことにも驚くことになった。
しかし、21世紀にはいると経済のグローバル化が進み、企業行動がもたらす社会・環境問題が国境を越えて起こるようになり、十分な法整備が行われていない新興国で起こるようになった。著名なグローバル企業で起こった新興国における児童労働などはその典型であった。また気候変動の問題のように、世界中の国が揃って対応を図らないと解決できない問題も顕在化してきた。そうした中で、登場してきたのがESGであり、ESG投資の考え方である。資本主義のもとで、最も力があるはずの資本=株主の力によって、グローバルに環境・社会・ガバナンスの課題を解決に向けていこうということだ。利益を追求する資本が、利益を追求すると同時に、ESG課題についてもきちんと取り組むよう企業に迫っていこうということである。
ESG投資は資産運用の世界において着実に大きな地位を占めてきている。日本においてもGPIFが積極的な姿勢を示し、それに追随する動きもある。その結果、先進国の企業行動を見る限り、ESG投資の効果は確実に出ているように思われる。バリューチェーンの隅々まで目を配り、社会・環境問題を起こしていないかを確認することはグローバル企業の経営者に求められる重要な役割となってきた。
資本主義の持つ利益追求姿勢は時に大きな問題を引き起こす。その課題を資本主義の力、資本の力で解決していこうというESGの言わば逆転の発想がどこまで成功するのか、国家資本主義と言われる中国の企業にも影響を与えていくことができるのか、資本主義が生み出した新たな知恵がマルクスを驚かすことを期待したい。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

03-3512-1793
(2019年04月26日「研究員の眼」)
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