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- 歴史、地理そして経済-戦国時代、金銀交換比率は1:10だった
コラム
2024年09月30日
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「畿内では、金銀の交換比率はおおよそ一対十ということになるが、ここではその比率が一対十二となる。」「唐という国での金銀の交換比率はおよそ一対九」これは、直木賞作家である垣根涼介氏の最新作「武田の金、毛利の銀」(KADOKAWA)の一節である。「ここ」とは毛利の石見銀山近くの港、温泉津だ。
織田信長の家臣となった明智光秀は、信長から、武田の金山、毛利の銀山が持つ力を調べてくるよう命じられる。武田の金山を調べた光秀は、その後、毛利へと向かい、「こんな賑わっている町は見たことがない」と石見銀山の繁栄ぶりに圧倒され、信長に毛利の銀山による経済力の大きさを報告する。
織田信長の家臣となった明智光秀は、信長から、武田の金山、毛利の銀山が持つ力を調べてくるよう命じられる。武田の金山を調べた光秀は、その後、毛利へと向かい、「こんな賑わっている町は見たことがない」と石見銀山の繁栄ぶりに圧倒され、信長に毛利の銀山による経済力の大きさを報告する。
現在の金銀の交換比率はおよそ一対八十五、もし当時もこの交換比率であれば、信長にとって「武田の金」の方が脅威だったかもしれない。また、唐という国際市場の相場、日本の首都圏での相場そして地方の相場の間に緩やかな裁定が働いていたのも興味深い。江戸時代、鎖国の間にこの裁定が働かなくなり、国内の金銀交換比率が国際相場から乖離した結果、開国後の幕末に日本から金貨が流出したことと対照的である。代々木ゼミナールのカリスマ地理講師・宮沢秀作氏は「現代史は地理から学べ」(SB新書)で
・歴史の解釈に「確からしさ」を加味し、より事実に迫るために役立つものが地理学である。と、歴史を知る上での地理の重要性を語る。そして、その地理とは地形であり、天候であり、天然資源である。
・地理という事実をかけ合わせると「何がどのようにして起こったのか」という歴史の真実に迫ることができる。
信長が、地理そして経済を調査し、未来(これから起こる歴史)において「何がどのようにして起こるのか」を展望しようとしていたことには驚かされる。(この調査を命じたことが史実かどうかはわからないので、あくまで「垣根信長」ではあるが。)
歴史に学び、地理を理解し、経済予測に活かしていきたい。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年09月30日「研究員の眼」)
03-3512-1793
経歴
- 【職歴】
1983年 日本生命保険相互会社入社
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2013年 日本生命保険相互会社 支配人
2014年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部部長
2020年4月 専務取締役経済研究部部長
2024年4月より現職
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