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- 取締役報酬はどう決まるか(3)-募集新株予約権報酬(ストックオプション報酬)
コラム
2022年11月17日
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今回の取締役の報酬にかかる題材は募集新株予約権の付与(ストックオプション)である。形式としては取締役に対する報酬支払として、募集という方法を用いて新株予約権を交付(付与)するものである。以下、募集新株予約権を単に新株予約権という。
本稿ではそもそも新株予約権とは何かから始めたい。新株予約権とは、権利者(新株予約権を有する者)が、あらかじめ定められた期間(行使期間)内に、あらかじめ定められた価額(権利行使価額(法律上は新株予約権の行使に際し出資される財産の価額という)たとえば80万円)を会社に払い込むことにより、当該会社から所定の数の株式の交付を受けることができる権利である(会社法(以下、法)2条21号)。
権利行使価額が市場の株価(たとえば150万円)よりも低ければ、権利を行使して行使価額の払込みを行うことで権利者は差額(150万円引く80万円、つまり70万円)を取得することができる。新株予約権の当初の発行時の対価として、たとえば50万円の払込を権利者が会社に対して行っていた場合には、差引20万円の利益が生ずる(図表1)。
本稿ではそもそも新株予約権とは何かから始めたい。新株予約権とは、権利者(新株予約権を有する者)が、あらかじめ定められた期間(行使期間)内に、あらかじめ定められた価額(権利行使価額(法律上は新株予約権の行使に際し出資される財産の価額という)たとえば80万円)を会社に払い込むことにより、当該会社から所定の数の株式の交付を受けることができる権利である(会社法(以下、法)2条21号)。
権利行使価額が市場の株価(たとえば150万円)よりも低ければ、権利を行使して行使価額の払込みを行うことで権利者は差額(150万円引く80万円、つまり70万円)を取得することができる。新株予約権の当初の発行時の対価として、たとえば50万円の払込を権利者が会社に対して行っていた場合には、差引20万円の利益が生ずる(図表1)。
他方、指名委員会等設置会社においては、報酬委員会において個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めた(法409条1項)うえで、当該方針に則って個人別の報酬内容を決定する(同条2項、3項、法404条3項)。この場合には、他の会社形態では株主総会で決定すべきとされる上記図表3に定める事項については、報酬委員会において決定する(法409条3項4号、規110条の2)こととされている。
また、報酬委員会で報酬に係る方針を決定したときには、事業報告で上記一定の監査役会設置会社等と同様の開示を行う必要がある(規119条2号、121条6号)。以上まとめると指名委員会等設置会社におけるストックオプション報酬提供の手続は図表6となる。
また、報酬委員会で報酬に係る方針を決定したときには、事業報告で上記一定の監査役会設置会社等と同様の開示を行う必要がある(規119条2号、121条6号)。以上まとめると指名委員会等設置会社におけるストックオプション報酬提供の手続は図表6となる。
ストックオプションは、株式報酬と同様に株価というわかりやすい基準で、かつ取締役報酬の増加がすなわち株主利益の増加であるというメリットがある。
次回は本シリーズ最終回として退職慰労金について解説を行う。
1 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1543.htm
2 取締役の報酬としてではなく、一般に募集新株予約権を発行する場合は、原則として株主総会の特別決議が必要である。(法238条1項、2項、309条2項7号)
3 募集新株引受権と引き換えに払込みに充てるための金銭を報酬とする場合には別の規律がある(法361条1項5号ロ)が、省略する。
次回は本シリーズ最終回として退職慰労金について解説を行う。
1 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1543.htm
2 取締役の報酬としてではなく、一般に募集新株予約権を発行する場合は、原則として株主総会の特別決議が必要である。(法238条1項、2項、309条2項7号)
3 募集新株引受権と引き換えに払込みに充てるための金銭を報酬とする場合には別の規律がある(法361条1項5号ロ)が、省略する。
(2022年11月17日「研究員の眼」)

03-3512-1866
経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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