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コラム
2022年06月23日
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会社法には「社長」や「副社長」といった、経営者に該当するとされる肩書を定義した条文はない。ただ、会社が「社長」や「副社長」といった代表権限を有すると認められる名称を付した者が行った取引について、会社は善意の第三者に対して責任を負うという条文(表見代表取締役という。法354条)があるだけである。
そもそも、会社法上は「取締役、会計参与、監査役」のみが役員とされる(法329条)。ちなみに会計参与を置く株式会社はあまり一般的とは言えないので以下では触れない。
ところで以前の研究員の眼1で解説した通り、上場企業では三つの会社形態がある。すなわち、(1)監査役会設置会社、(2)指名委員会等設置会社、および(3)監査等委員会設置会社である。このうち、取締役と監査役の双方を選任するのは(1)監査役会設置会社だけである。(2)指名委員会等設置会社では取締役のみを選任する。(3)監査等委員会設置会社では取締役のみを選任するが、取締役と、監査等委員兼務の取締役とを分けて選任することとされている(法329条2項)。
そもそも、会社法上は「取締役、会計参与、監査役」のみが役員とされる(法329条)。ちなみに会計参与を置く株式会社はあまり一般的とは言えないので以下では触れない。
ところで以前の研究員の眼1で解説した通り、上場企業では三つの会社形態がある。すなわち、(1)監査役会設置会社、(2)指名委員会等設置会社、および(3)監査等委員会設置会社である。このうち、取締役と監査役の双方を選任するのは(1)監査役会設置会社だけである。(2)指名委員会等設置会社では取締役のみを選任する。(3)監査等委員会設置会社では取締役のみを選任するが、取締役と、監査等委員兼務の取締役とを分けて選任することとされている(法329条2項)。
そこで「執行役」についてであるが、会社法では上記②指名委員会等設置会社においてのみ、取締役会で選任することとされている(法402条)。執行役は会社法上の役員ではないが、取締役会から委任を受けて、本来は取締役会の権限である業務執行の決定(一部の重要事項除く、後述)と、業務の執行を行う(法416条4項、418条)。執行役が複数名いるときは代表執行役も選任される(法420条)。このように、指名委員会等設置会社においては、執行役が経営者として会社を運営する。このことを踏まえると一般的な意味としての経営者と会社法上の役員とは異なる。
指名委員会等設置会社の取締役会は、会社法上執行役に委任できないこととされている重要事項の決定(例えば経営方針の策定や株主総会の議案内容の決定)と、執行役の業務執行に関する監視・監督を行う機関となる。このように取締役会が経営をモニターする機関として主に機能するため、指名委員会等設置会社の機関設計はモニタリングモデルといわれる。執行役は英米法におけるExecutive officer(またはofficer)の和訳である(取締役会はBoard of directorsという)。なお、取締役と執行役の兼務も可能である(法402条6項)。
他方、「執行役員」は会社法には一切の規定がない。ただ、実際に、上記(1)監査役会設置会社と(3)監査等委員会設置会社で任意に執行役員を置くケースが多く見られる。コーポレートガバナンス・コードではこれらの機関形態((1)と(3))の会社で、取締役で構成される任意の組織である指名委員会や報酬委員会を設置することが推奨されていて(原則4-10参照)、任意に導入した執行役員制度とあわせて疑似的にモニタリングモデルを実現しているといえる。
翻って考えてみると、取締役の職務は取締役会に参加することを通じて、重要な業務執行の決定を行い、業務執行の監督を行うことであって、業務を執行する権限が法律上付与されているわけではない。取締役の地位を有する者が業務執行するには、代表取締役(法362条3項)となるか、副社長取締役や専務取締役などの業務執行取締役となるか、あるいは部長兼務といった使用人兼務取締役となるかのいずれかを通じて業務執行に関与する。したがって、取締役として選任されることと、職務として業務執行に関与することとは別のことであって、取締役ではない専務執行役員や常務執行役員がいてもおかしくはない。
ただ、指名委員会等設置会社以外では、法定されている取締役会権限を取締役等に対して委任することはできない(法362条4項等、なお法373条で例外あり)。そのため執行役と異なり、執行役員に大幅な業務執行の決定権の移譲はできない。しかし、この点は取締役会を機動的に開催することができるのであれば必ずしもデメリットとはならず、むしろ執行役員が重要事項を取締役会に付議することを通じて、執行役員が取締役会に対する説明責任を果たすことを重視した機関設計であると見ることもできよう。
指名委員会等設置会社の取締役会は、会社法上執行役に委任できないこととされている重要事項の決定(例えば経営方針の策定や株主総会の議案内容の決定)と、執行役の業務執行に関する監視・監督を行う機関となる。このように取締役会が経営をモニターする機関として主に機能するため、指名委員会等設置会社の機関設計はモニタリングモデルといわれる。執行役は英米法におけるExecutive officer(またはofficer)の和訳である(取締役会はBoard of directorsという)。なお、取締役と執行役の兼務も可能である(法402条6項)。
他方、「執行役員」は会社法には一切の規定がない。ただ、実際に、上記(1)監査役会設置会社と(3)監査等委員会設置会社で任意に執行役員を置くケースが多く見られる。コーポレートガバナンス・コードではこれらの機関形態((1)と(3))の会社で、取締役で構成される任意の組織である指名委員会や報酬委員会を設置することが推奨されていて(原則4-10参照)、任意に導入した執行役員制度とあわせて疑似的にモニタリングモデルを実現しているといえる。
翻って考えてみると、取締役の職務は取締役会に参加することを通じて、重要な業務執行の決定を行い、業務執行の監督を行うことであって、業務を執行する権限が法律上付与されているわけではない。取締役の地位を有する者が業務執行するには、代表取締役(法362条3項)となるか、副社長取締役や専務取締役などの業務執行取締役となるか、あるいは部長兼務といった使用人兼務取締役となるかのいずれかを通じて業務執行に関与する。したがって、取締役として選任されることと、職務として業務執行に関与することとは別のことであって、取締役ではない専務執行役員や常務執行役員がいてもおかしくはない。
ただ、指名委員会等設置会社以外では、法定されている取締役会権限を取締役等に対して委任することはできない(法362条4項等、なお法373条で例外あり)。そのため執行役と異なり、執行役員に大幅な業務執行の決定権の移譲はできない。しかし、この点は取締役会を機動的に開催することができるのであれば必ずしもデメリットとはならず、むしろ執行役員が重要事項を取締役会に付議することを通じて、執行役員が取締役会に対する説明責任を果たすことを重視した機関設計であると見ることもできよう。
(2022年06月23日「研究員の眼」)

03-3512-1866
経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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