2022年11月16日

マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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4――今後マイナンバーカードを使って利用したいサービスや場面

マイナンバーカードを「現在申請中・今後申請予定」と回答した314人を加えた2079人を対象に、今後マイナンバーカードを使って利用したいサービスや場面を尋ねたところ、全体で高い順に「身分証明書として提示」で51.3%、次いで「行政手続き・各種証明書の発行(48.1%)」「マイナポイントの取得(43.7%)」「健康保険証として医療機関や薬局で使用(30.8%)」だった(図表6)。今後一体化することになっている「運転免許証として利用」は11.8%だった。

以下、比較的利用意向があった項目について全体との差をみる。まず、性別にみると、男性でマイナポータルを使った「行政からのお知らせの閲覧」等、および「健康保険証として医療機関や薬局で使用」や「運転免許証として利用」が高く、女性で「身分証明書として提示」が高かった。年齢別にみると、若いほど「いずれもなし」が高く、利用意向が低かった。35~49歳で「マイナポイントの取得」が、50~74歳で「行政手続き・各種証明書の発行」が、50~64歳で「マイナポータルを使ったサービス」、特に「年末調整や確定申告」「年金の相談や照会」のほか「運転免許証として利用」が、65~74歳で「身分証明書として提示」や「健康保険証として医療機関や薬局で使用」が、それぞれ高かった。職業別にみると、パート・アルバイトで「身分証明書として提示」が、自営業・自由業で「行政手続き・各種証明書の発行」、「マイナポータルを使ったサービス」、特に「年末調整や確定申告」が、それぞれ高かった。世帯年収では、年収が高いほど「いずれもなし」が低く、利用意向がみられ、800万円以上で「マイナポイントの取得」「マイナポータルを使ったサービス」、特に「年末調整や確定申告」が、それぞれ高かった。
図表6 今後マイナンバーカードを使って利用したいサービスや場面(性、年齢、職業別)
つづいて、取得時期、暮らし向き、持病等の有無、オンライン化等に対する不安別にみた結果を図表7に示す。

取得済/現在申請中・今後申請予定の別でみると、現在申請中・今後申請予定の人は「いずれもなし」が低く、多くの項目で全体を上回ったが、「マイナポータルを使ったサービス」は取得済の人が全体を上回った。取得済の人について、取得時期別にみると、取得時期が古い人で「いずれもなし」が低く、利用意向が高い傾向があった。暮らし向きでみると多くの項目で、ゆとりがある人が全体を上回った。特に「健康保険証として医療機関や薬局で使用」で差は大きく、ゆとりがある人はゆとりがない人を10ポイント近く上回った。持病等の有無別にみると、持病ありで「行政手続き・各種証明書の発行」、マイナポータルを使った「受診歴、予防接種歴、健康診断結果の閲覧」、および「健康保険証として医療機関や薬局で使用」が、持病等がない(あてはまるものはない)人で「マイナポイントの取得」が、それぞれ高かった。オンライン化等に対する不安の有無でみると、いずれの項目で不案がない人が全体を上回った。特に「行政手続き・各種証明書の発行」や「マイナポータルを使ったサービス」等のオンラインサービスの利用で差は大きく、不安がある人は不安がない人を10ポイント前後下回った。
図表7 今後マイナンバーカードを使って利用したいサービスや場面(取得時期、暮らし向き、持病等、オンライン化等への不安別)
図表4、5のこれまでの利用経験と比べると、「マイナポイントの取得」は、既に第2弾も取得している人がいると考えられることから低くなっていたが、それ以外はいずれも今後の利用意向の方が高い。ただし、「いずれもなし」はこれまでの利用経験と同程度の高さとなっており、利用意向がない人は、今後に向けても一定程度いるようだ。

2024年秋に原則一本化される健康保険証としての利用は30.8%で、これまでの利用経験と比べて大幅に上昇した。特に、65~74歳の人や持病がある人で高い傾向があった。これらの医療機関や薬局にかかる機会が多いと考えられる人で、保険証としての利用に期待がある可能性がある。

また、マイナポータルの利用については他のサービスと比べると上昇幅は6.8ポイントと比較的小さかったが、「受診歴、予防接種歴、健康診断結果の閲覧」については65~74歳が、「年金の相談や照会」については50~64歳の定年前後と思われる年代での利用意向が相対的に高かった。今後の利用においても、これまでの利用経験と同様に、暮らし向きにゆとりがある人、オンライン化等に対する不安がない人で、それぞれゆとりがない人や不安がある人と比べてより高かった。

なお、本稿で使用する調査は、まだ、現在の保険証廃止の議論が出る前に行ったものであることから、原則として2024年秋に廃止されることが決まっているとすれば、ポイントがもらえるうちに申請する人がいると思われ、現在はこの調査時点と比べて取得意向やマイナポイント取得意向は上がっている可能性がある。

5――おわりに

5――おわりに

以上のとおり、本稿では、9月末に実施したインターネット調査の結果を使って、マイナンバーカードの取得状況と、これまでの利用状況、今後の利用意向について紹介した。

マイナンバーカードは、本稿で使った調査では61.0%が取得しており、65~74歳、公務員や自営業・自由業者、世帯年収800万円以上で高かった。マイナポイント事業が始まる前(2019年以前)に取得していた人では、身分証明書としての利用のほか、行政手続き、年末調整や確定申告等に利用していた。これらの人は、今後についても、同様の使途で利用意向が高い傾向があり、マイナンバーカードが手続き等に便利だったと考えられる。今後については、50~64歳でマイナポータルを使ったサービスの利用意向が高く、リタイヤにともなって発生する各種行政手続きや年金の相談等での活用があり得る。

保険証としての利用は、保険証として登録ができるようになってまだ日が浅いこと、対応している医療機関が限定されること、従来の保険証と比べると初診料・再診料が高かったことなどを背景に、現在のところは5.4%に留まった。しかし、今後の利用意向は30.8%と高くなっていた。特に、医療機関や薬局の利用が多いと考えられる65~74歳、持病ありの人で利用意向が高かった。従来の保険証を原則として廃止する方針が発表されてから保険証としての利用についての課題が話題になることが多いが、利用に期待する人もいるようだ。

マイナンバーカードは、身分証、保険証、障害者手帳等として提示するほか、マイナポータルを使って、確定申告や受診歴等の閲覧、年金額の確認、児童手当や介護サービス等利用申請ができることがメリットの1つである。しかし、現在のところマイナポータルの利用意向は、古くからマイナンバーカードを使っている人や暮らし向きにゆとりがある人、オンライン化やキャッシュレス化が進むことで様々なサービスが利用しにくくなることへの不安がない人で高いが、これからカードを取得する人、暮らし向きにゆとりがない人、オンライン化等における不安がある人では低く利用意向には偏りがみられ、マイナポータルの全面的な普及には時間がかかりそうだ。今後、マイナポータルに搭載されるサービスは拡充していくと考えられるが、オンラインサービスに慣れ親しんでいない人もメリットを享受できるような運用に期待したい。

今回利用した調査は、インターネット調査であり、デジタル化やオンラインによるサービス利用に親しみがある層が回答していると考えられるが、それでも、カードの取得や利用に慎重な考えをもつ人があると思われる。今回、カード取得については、マイナポイント事業やメディアを使った広報活動、申請窓口の増設等によって進んだとしても、約5年後には電子証明書の更新を自分で行う必要がある。今回の調査では対象となっていない75歳以上を含めて、利用や更新がスムーズにできるようなシステム構築と運用が求められるだろう。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2022年11月16日「基礎研レポート」)

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