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「ポイ活」が作る「開かれた社会」の「閉ざされた経済圏」

総合政策研究部 専務理事 エグゼクティブ・フェロー・経済研究部 兼任 矢嶋 康次
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■ 急増するキャッシュレス決済
世界と比較すると日本の現金流通高は圧倒的に多いが、10年程前に比べると、現金を見る機会が極端に減ったように思う。クレジットカードや電子マネーを使う人が急増している。2021年に電通が実施したネット調査によれば、利用頻度が最も高いモバイルQR決済は、週に2~3回以上使う人が57.8%、毎日使う人も17.7%いた。キャッシュレス決済の普及は、着実に進んでいる。この10年で決済比率は2倍以上に急増している。
金利なしでもポイントがある
私は数年前、増える一方のポイントカードが財布に入りきらなくなり、ほとんどのカードを捨ててしまった。いまさらポイントを貯め直すのも癪に障るので、会計のときに「ポイントを貯められますか?」と聞かれても断っている。
矢野経済研究所の推計では、日本のポイント発行総額は、2021年度時点で2兆1001億円、一人当たり1万6824万円に達する。ポイントを活用して生活する「ポイ活」のハウツウ本が書店に並び、テレビの生活情報番組では達人が自身のポイ活について熱弁を振るう。ポイント価値を金額に換算すると、ポイ活の達人と私が一生涯を通じて得る金額にどのくらいの差が生じているのか。
経済圏の躍進
店舗に行かなくても、スマホのボタンを「ポチ」と押すだけで購入でき、後は配送を待つだけである。経済圏で流通しているポイントはあたかも「通貨」のような役割を果たし、経済圏で販売されるあらゆる商品、サービスの購入によって得られたポイントが別の商品、サービスの購入に充てられる。ポイントが循環するエコシステムが成り立っている。企業が従業員のスマートフォンの決済アプリの口座などに直接払い込む「デジタル給与」が、来年4月に解禁される見通しとなった。ますます経済圏は拡大しそうだ。
閉ざされた消費の世界
データ社会が進むにつれ、私たちは簡単に多くのデータや情報に接し、何でも便利に購入できる開かれた社会で生活するようになった。しかし、その結果、かえって閉ざされた経済圏という不思議な世界を創り出すことになった。隣の芝生が青い、のかどうかもわからない世界である。いつか完全に現金が使われなくなり、そして人々が店に並んでモノを購入する姿すら見られない世界が出現するかもしれない。
私が貯めたたくさんの10円玉を最も高くポイントにしてくれる「一番芝生の青い」経済圏はどこだろうか。
このレポートは、新潮社Foresight(フォーサイト、https://www.fsight.jp/)より転載したものです。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年11月02日「基礎研レター」)

03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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