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成長戦略としての「カーボン・ニュートラル」-各国で進むグリーン戦略、日本は巻き返せるか
総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次
1――菅首相の2050年「カーボン・ニュートラル」宣言
2――各国で進む強力なグリーン戦略、政府の強いコミットメントが必要に
すでに諸外国が歩みを進める中、日本はどうか。環境投資の出遅れ感が気がかりだ。
イノベーションは、民間が起こすものであるが、新しい社会構造への転換を目指す政府の強い意思が見えないと、民間はなかなか動くことができない。
図表4は、2015 年7月に策定された長期エネルギー需給見通しの内容だ。この中で省エネ計画は2013年度実績から2030年度までに年間最終エネルギー消費を対策前に比べ原油換算5,030万kl程度削減することを見込んでいる(図表4、左)。これは2013年から2030年度までに、エネルギー消費効率を35%程度改善することに相当し、石油危機後の20年間に我が国が実現した省エネと同程度の改善となっている(図表4、右)。かなり野心的な計画だ。
今回日本が示した2050年「実質ゼロ」は、おそらくエネルギー消費効率を今までの計画以上のものにすることになるだろう。今までの野心的な計画から、世界に対して宣言した数値目標に変更したことの重みは異なる。相当な覚悟と計画が必要になる。
そのためには、大規模な投資と研究開発を実施し、民間行動を抜本から変える必要がある。制度設計の詳細、支援策、規制緩和などの具体策が、どのように示されるのか。政府の強いコミットが求められる。
政府は、水素・蓄電池・洋上風力などの重点分野について、年末までに具体的な目標や事項計画を策定し、支援策なども合わせてグリーン成長への道筋を明らかにする方針だ。その内容に注目したい。
社会全体を見渡すと足元のコロナ禍の動きで、経済と資本市場、債務とのバランスが悪くなっている。今後、成長戦略によってGDPが膨らまなければ、資本市場のクラッシュ(株価急落や為替の急変動等)、債務問題の勃発などにより、リバランスが図られることはあり得る。それは日本にとって不幸だ。デジタルとカーボン・ニュートラルという2つの成長戦略が実を結ぶのかが、日本の将来にとって極めて重要になってくる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年11月17日「研究員の眼」)
03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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