コラム
2020年11月09日

米バイデン政権誕生と日本-多面的な議論、米国とのパイプ作りを行うべき

総合政策研究部 研究理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任   矢嶋 康次

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1――4年ぶりに民主党政権誕生、トランプ政権とは大きく異なる政策運営。ただし、議会上院で共和党が優勢となれば政策の一部はマイルドに

米大統領選でバイデン前副大統領が当選を確実にしたことで、民主党が4年ぶりに政権を奪取し、閣僚人事を含めた新政権構想に着手した。分断された国家をいかに修復するかが最優先課題である。政権の特色は、多様性と左派色だ。

トランプ現大統領は規制緩和、減税路線が基本姿勢であったのに対し、バイデン氏は金融規制の強化、富裕層への増税、法人税の引き上げなどを主張する(図表1)。トランプ氏と比べ、バイデン氏は企業に厳しい政策を掲げていると言える。これらの政策の詳細が見えてくれば、実体経済、株式市場にとってネガティブに働きそうだ。
(図表1)大統領選挙における主な政策の違い
ただ、足元ではコロナ感染が再び拡大し始めている。バイデン政権が誕生してもすぐに増税や規制強化をすることはできないだろう。共和党に比べ、民主党はより厳しい感染対策をとると思われる。その分、財政支出は早期に大規模な政策が出そうだ。中期的には、民主党色の強い政策は経済・株式市場にとってネガティブなものが並ぶが、短期的にはコロナ禍での大規模かつ早期の財政出動を好感しそうだ。

いまだ結果がでていない上院の行方は注目だ。ここで共和党が優勢となれば、ねじれ議会となり、バイデン民主党政権が掲げる看板政策や、左派色が強い人事案に対して強硬に反対し、マイルドに修正されるとの思惑もでてくるだろう。

2――米国の対中政策の行方、じりじり進む円高に対する新政権閣僚の見解に注目

今後民主党への移行が進む中で、各種政策の細部や人事などが見えてくるが、米国の対中政策やドル安に対する姿勢には特に注目せざるを得ない。
(米国の対中政策がどのように変化してくるのか)
米国の外交・安全保障政策がどう動くのか要注意だ。トランプ政権の4年間ではTPPやパリ協定からの離脱表明など、国際協調体制が大きく変動した。バイデン政権は環境政策や対イラン政策、TPP、WTOといった国際協調の枠組みを利用した政策を実施してくるだろう。

日本にとっては米国の対中政策がどうなるのかが注目される。バイデン氏は、安全保障よりも人権・環境問題を重視している。中国の出方次第では現在課している関税の引き下げを行うだろう。そのことは日本経済にとってプラスに働く。
(図表2)尖閣諸島周辺の接続水域内入域及び領海侵入隻数 しかし、民主党が重視する人権などでは欧州と米国は接近し中国包囲網をかけてくるだろう。日本は、日米同盟を軸にしながらも、経済面では中国との関係も重要との戦略をとっている。マルチで中国包囲網が形成されたときに、日本の姿勢は?との踏み絵を踏まされる可能性は高い。

中国は尖閣侵入を加速させている(図表2)。また、全国人民代表大会では、海上警備を担う中国海警局の根拠法となる海警法草案の全文が公表された。日本国内からも中国に対して厳しい態度で臨むべきだとの主張が高まる地合いにある。
(図表3)ドルの実質実効レート・ドル円 (ドル安に対する主張がどうなるのか)
足もとでドル安・円高がじりじり進んでいる(図表3)。100円を割れてくると自動車を中心に輸出の流れが止まりかねないが、それを止める現実的手段は、口先介入くらいしかない。

民主党政権にシフトし、新しい財務長官がドルに対してどのような見解を示すのか。強いドルを望むとは言わないだろうが、ドル安を誘導するような発言、主張をされると日本としてはかなり困ったことになりかねない。
 
 

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総合政策研究部   研究理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融、日本経済

(2020年11月09日「研究員の眼」)

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