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ランキング考-「トップ10入りしたい」心理とは?
基礎研REPORT(冊子版)11月号[vol.308]
 
                                                保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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◇ ランキングの要件
ランキングを作る際は、レーティングによる評価が行われることが多い。レーティングとは、共通の尺度を用いて各項目に点数などを付与して比較することで、客観的なものと主観的なものがある。通常は、両者が混じり合ったものとなる。
客観的な評価は、例えば身長や体重のように評価が測定者によらない。これに対して、文化・芸術など定量化が困難な分野では、評価をする側の主観に基づいて評価が行われることとなる。
◇ 役に立つレーティングとは
名義尺度は、言葉で表現するもの。例えば、花の美しさの表し方には「奇麗」「優美」「可憐」などがあるが、「奇麗」が「可憐」に勝るわけではない。順序尺度は、順序付けはできるが、どれぐらい違うのかは測れないもの。例えば、剣道の段位では初段よりも二段のほうが強いが、差を量で表すことは難しい。間隔尺度は、違いを数量で表示できるが比率には意味がないもの。例えば、摂氏37度は36度よりも高いが、36分の37倍高いわけではない。比率尺度は、違いの比率に意味があるもの。時間や重さ等の物理量が該当し、絶対温度もこれにあてはまる。
このうち、名義尺度は、ランキングには向かない。順序尺度はランキング作成が可能だが、同じ順序は同順位となる。間隔尺度や比率尺度を用いたレーティングによって、ランキングが可能となる。
◇ 「トップ10入りしたい」心理
ヒット曲や新車販売台数などのランキングでは、よくトップ10が用いられる。この場合、第8位、第9位などの順位は重要ではなく、トップ10入りすることこそがステータスを表す大切なこととなる。そのため、トップ10圏外となる第11位はどうしても避けたい、との心理が働く。
また、ランキングに関するオリンピックなどのメダリストの心理研究も有名だ。金メダリストは当然気分がよい。その反面、第2位の銀メダリストは、金メダリストとの比較で惨めな気持ちになりやすい。一方、第3位の銅メダリストは、第4位以下との比較で満足しやすいという。
ランキングをどうとらえるか、人間心理には順位とは別の意味もあるといえる。
◇ ランキングが影響をもたらすことも
また、ランキングにより、測定尺度の活用が歪むこともある。評価を受ける側では、評価要素にばかり目が向くようになり、それ以外の要素への関心は薄れる。
アメリカの社会科学者ドナルド・キャンベルは、定量的指標が(ランキングに)用いられるようになるほど、社会に弊害をなす傾向がある(「キャンベルの法則」といわれる)といった趣旨の指摘を行っている*。
その典型例として、旧ソビエト社会主義における計画経済が取り上げられる。工業の生産目標は、品質や利用者の満足度は問わずに、製品や材料の重さだけで測定された。その結果、重いシャンデリアや、重い鉄の土台が付いた機械がたくさん作られるようになったという。
今度何かのランキングを目にしたら、それがどういう人間心理や社会的影響をもたらすか、考えてみるのもよいだろう。
* “Assessing the Impact of Planned Social Change”(Donald T. Campbell, Dec. 1976)
他の参考文献は「ランキング考ー『トップ10入りしたい』心理とは?」篠原拓也(研究員の眼, 2022年10月21日)に記載
(2022年11月08日「基礎研マンスリー」)
 
                                        保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
                                研究・専門分野
                                保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
                            
03-3512-1823
- 【職歴】
 1992年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所へ
 【加入団体等】
 ・日本アクチュアリー会 正会員
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