2022年10月24日

半年以内のコロナ収束を予想する人は16%~国内の収束予想は世界と比べて出遅れ感?

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――16%が半年以内に国内の新型コロナウイルスの感染拡大が収束すると考えている~世界と比較すると、やや遅れを感じはじめている可能性

国内と世界のそれぞれについて、「半年以内に新型コロナウイルスの感染拡大が収束する」と思うかを6段階(そう思う/ややそう思う/どちらともいえない/あまりそう思わない/そう思わない)で尋ねた。図表1に、「そう思う」または「ややそう思う」と回答した割合の推移を示す。

まず、国内について尋ねた結果をみると、2020年6月(第1回調査)には、全体の16.2%が「そう思う」または「ややそう思う」と回答していたが、その割合は2021年3月(第4回調査)にかけて11.5%まで低下していた。その後、7月(第5回調査)に一時14.5%に上昇したが、9月(第6回調査)に再び12.5%に低下し、以降は2022年6月(第9回調査)の16.2%までゆるやかに上昇していた。直近の9月(第10回調査)には、それよりやや低下している。

2021年7月調査における一時的な上昇は、この時期は、新規陽性者数が落ち着ついていたのに加えて、4月には重症化リスクが高い高齢者等の新型コロナウイルスのワクチン接種がはじまったことや、7月には1年延期されていた東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まっていたことから、収束に向けた期待が高まっていたことによると考えられる。

つづいて、国内について尋ねた結果を、世界について尋ねた結果と比較すると、2020年6月には、国内が世界5ポイント近く上回っており、国内において半年以内に感染拡大が収束すると感じている人の方が多かった。その後は差が縮まりつつも、終始国内が世界を上回って推移していたが、2022年9月に、初めて世界が国内を上回った。国内の収束に向けた期待が鈍化しているようだった。

流行当初は、欧米における感染拡大は国内に比べて激しく、国内の感染収束の方が想像しやすかったが、国内でも流行は長引いたことで差は縮まったと考えられる。さらに、2022年の夏ごろから、国内に比べて世界で収束すると思う割合が急上昇しているのは、海外における水際対策やマスク着用義務の緩和や、マスクなしの日常生活や各種イベント等といった感染収束を見据えた報道等を見聞きする機会が増えたことが背景にあると考えられる。
図表1 「半年以内に感染拡大が収束する」に対して「そう思う/ややそう思う」と回答した割合

2――収束予想には感染経験とも関係している可能性

2――収束予想には感染経験とも関係している可能性

1|感染不安やワクチン・治療薬などの流通見込みへの考え方との関係
2022年9月に実施した第10回調査2で、国内で半年以内に感染拡大が収束すると思うかについて尋ねた結果を性別にみると、男性が女性を6ポイント上回り高かった。年齢では50~64歳が低かった。

しかし、性別、年齢別よりも、新型コロナウイルスの感染不安や、ワクチン、治療薬などの流通見込みに対する考え方で大きな差があり、「1年以内に経口治療薬などが流通し、新型コロナウイルスを季節性のインフルエンザ並みに制御できるようになる(以下、「1年以内に制御可能」とする。)」に対して「そう思う」または「ややそう思う」と回答した人の39.0%が、感染による健康状態の悪化に対して「あまり不安ではない」または「全く不安ではない」と回答した人の23.7%が「半年以内に感染拡大が収束する」に対して「そう思う」または「ややそう思う」と回答した人の割合が高かった。ただし、感染による健康状態の悪化が不安ではない人は全体の18.8%(480人)しかおらず、「1年以内に制御可能」と思っている人も30.4%(777人)と半数に満たない。さらに、「1年以内に制御可能」と思っている人でも、国内における半年以内の感染拡大収束は4割程度にとどまっており、全体としてはまだ収束に対して慎重な考えを持っていると言えるだろう。
図表2 「半年以内に感染拡大が収束する」に対して「そう思う/ややそう思う」と回答した割合(属性別)
 
2 ニッセイ基礎研究所「第10回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」。全国の20~74歳の男女(株式会社マクロミルのモニター)を対象に2022年09月27日~10月3日に実施したインターネット調査。有効回答数2557。
2|感染経験との関係
感染拡大は、収束予想にどのような影響があるのだろうか。

第9回調査(2022年6月)と第10回調査(同9月)の両方に回答した人全体と、そのうち第9回調査以降、第10回調査までの3か月間に自分自身が感染した人の国内の感染拡大の収束に対する回答を図表3で比較する。第9回と第10回の2回の調査に回答した人は2,349人だったが、その中からいずれか1回でも自分自身や周囲の人の感染経験について「答えたくない」と回答した163人の回答は除外して2,186人のデータを使った3

その結果、対象者全体では第9回調査と第10回調査で「そう思う」または「ややそう思う」と回答した割合に変化はなかったが、この3か月間で自分自身が感染した人については4ポイント上昇していた。感染時期や流行している変異株のタイプ、その時期の感染者の人数等にもよるだろうが、今ではいつどこで感染してもおかしくない程、感染が拡がっている。感染が自分のところまできたことによって、感染の拡がりを実感し、収束の近さを感じる機会となった可能性がある。
図表3 「半年以内に感染拡大が収束する」に対して「そう思う/ややそう思う」と回答した割合(6月調査と9月調査の比較)
 
3 自分や身の周りの感染について、「自分が感染した」「自分が濃厚接触者となった」「同居の家族が感染した」「同居の家族が濃厚接触者となった」「友人や知人が感染した」「友人や知人が濃厚接触者となった」「職場の同僚が感染した」「職場の同僚が濃厚接触者となった」「子どもの通学・通園先や習い事教室等で感染者が出た」「子どもの通学・通園先や習い事教室等で濃厚接触者が出た」「家族の同僚が感染した」「家族の同僚が濃厚接触者となった」「上記の身の回りの人に感染者や濃厚接触者はいない」「答えたくない」からあてはまるものを選んでもらい、「自分が感染した」について6月調査ではあてはまらなったが、9月調査であてはまった場合を「この3か月で自分自身が感染した」と考えた。

3――感染対策の緩和

3――感染対策の緩和とあわせて不安軽減を行っていくことも必要では?

2009年に流行したH1N1型新型インフルエンザを振り返れば、2010年に入って北半球で感染が落ち着きを見せ始め、南半球の感染状況を踏まえて2010年8月にWHOが流行状況の段階を「ポストパンデミック」とする声明を出した。国内では、翌年3月に感染症法上の分類が「季節性インフルエンザ」に移され、サーベイランス等の監視体制が緩和された4。季節性のインフルエンザへの移行は、流行が沈静化したこと、国民の一定数が感染またはワクチン等によってH1N1型インフルエンザに対する免疫を獲得したと考えられることが考慮された5

新型コロナウイルスについてみると、国内で、新型コロナウイルス感染症の陽性が確認された人の数は、2022年9月半ばに2000万人を超えた。感染によって免疫をもった人が多いという状況には至っていないが、ワクチンについては打てる環境が整ってきたと考えられる。

このような環境の中、本調査でも、国内で半年以内に感染拡大が収束すると思う割合は、この1年ほどは緩やかに上昇していた。しかし、収束すると思う割合は、この3か月間に感染した人のほか、感染に対する不安が少ない人やワクチン・治療薬などの流通することを見込んでいる人で高かったが、1年以内に経口治療薬などが流通し、新型コロナウイルスを季節性のインフルエンザ並みに制御できるようになると考えている人でも半年以内の収束は4割程度にとどまり、収束に対しては慎重だった。

ウィズコロナに向けて、感染対策の緩和とあわせて、感染不安を強く感じる人に対して、感染時の不安を払拭するような政策を行っていくことも必要だろう。
 
4 厚生労働省「新型インフルエンザ(A/H1N1)に対する厚生労働省の取組について」(2010年8月27日)
5 村松容子「H1N1型インフルエンザ流行を振り返って」ニッセイ基礎研究所 基礎研マンスリー(2011年6月24日)
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2022年10月24日「基礎研レター」)

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