2022年09月12日

ロシアの物価状況(22年8月)-前月比では3か月連続のマイナス

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数は前月比マイナス、コア指数は前月比でゼロ成長

9月9日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(22年8月)】
前年同月比は14.30%、市場予想1(14.30%)と同じで、前月(15.10%)から低下(図表1)
前月比は▲0.52%、予想(▲0.50%)を下回り、前月(▲0.39%)からマイナス幅が拡大した

【コア指数2(22年8月)】
前年同月比は17.71%、予想(17.50%)を下回り、前月(18.40%)から低下(図表2)
前月比は0.00%、予想(▲0.18%)を上回り、前月(▲0.18%)のマイナスから脱した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:前月比は3か月連続のマイナス

8月のロシアのインフレ率は前年比で14.30%となり、7月の15.10%から低下した。

大分類別に見ると、食料品が前年比で4月のピーク(20.48%)から8月には15.77%まで低下、財(非食料品)が3月のピーク(20.34%)から8月には15.51%まで低下している。一方、サービスは3月以降の高止まりが続いており、ピークは4月(10.87%)であるが、8月(10.45%)もほぼ4月と同程度の伸び率となっている。

コア指数は前年比で3月18.69%→4月20.37%→5月19.87%→6月19.18%→7月18.40%→8月17.71%と推移しており、4月をピークに減速が続いているものの、伸び率は依然として15年のピーク(15年3月の17.53%)は上回っている。

前月比では、総合指数が▲0.52%(7月▲0.39%、6月▲0.35%)となり3か月連続のマイナスとなったが、コア指数は8月に0.00%(7月▲0.18%、6月0.18%)となり、物価水準としては横ばい推移となった(図表3)。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、5月下旬からゼロもしくはマイナスとなる時期が続いている。足もと9月5日時点では前週比▲0.13%で9週連続のマイナスとなっている(図表4)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 また、ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は8月には12.0%となった(7月は10.8%)。期待インフレ率は3月(18.3%)をピークに急速に低下したが、足もとでは横ばい圏での推移となっている(図表5)。
品目別の上昇率では3(図表6)、8月は前年比で海外旅行サービス(67.11%)、グラニュー糖(45.04%)、洗剤(32.60%)、穀物・豆(30.16%)の上昇率が高い。
前月比では、青果物(▲11.82%)、旅客サービス(▲3.21%)、テレビ(▲2.26%)、穀物・豆(▲1.64%)、海外旅行サービス(3.72%)、グラニュー糖(2.42%)の上昇率が高かった。全体の上昇率は前月比でマイナスとなったが、個別品目では上昇した財・サービスも少なくない。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は乳製品(0.7%ポイント)、海外旅行サービス(0.7%ポイント)、住居・公益サービス(0.5%ポイント)、家庭サービス(0.5%ポイント)、肉(0.5%ポイント)となった。前月比上昇率の寄与は、大きく押し上げた財・サービスがない一方で、青果物(▲0.5%ポイント)が6月、7月に続き大幅マイナスとなったほか、8月は旅客サービス(▲0.1%ポイント)も下落要因として目立った。
(図表7)
(図表8)

3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年09月12日「経済・金融フラッシュ」)

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