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- 昨年のジャクソンホールで早期利上げが示唆されたら、米株はどうなっていた?
コラム
2022年09月02日
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ジャクソンホール後に急落
1 「米株高の賞味期限は?」をご参照。
2021年末は10%程度、低い水準だったかも?
1年前のジャクソンホール会議を思い出すと、パウエルFRB議長がインフレは一時的であるとの考えを示し、2022年に入ってこれが誤った判断であることが明らかになっている。では、もし1年前のジャクソンホール会議で今年と同じようにインフレと戦う姿勢と早期の金融引締めが示唆され、金融引締めが実際よりも前倒しされていたら、米国株式はどのようになっていただろうか。
2021年末で考えると、実際にはS&P500種株価指数は4,766ポイントであった。長期金利が1.5%と低位であったため、予想PERが21.6倍と高い値が許容されていた。もし、金融引締めが前倒しされていたら長期金利は2%程度まで上昇し、予想PERが19.5倍程度まで低下した可能性がある。実際に2022年3月中旬以降、長期金利は2%を上回り続け、予想PERは2月中旬以降19.5倍を下回り続けている。もし、長期金利、予想PERともに金融引締めが3カ月程度前倒しされていたなら、こうした状況は2021年末にでもあり得たであろう。
筆者の試算では、S&P500種株価指数は2021年末に4,300ポイントとなり、実際の値より10%程度低くなっている【図表2】。この4,300ポイントを基準にすると、4,000ポイントを下回っている現在のS&P500種株価指数は8%程度低い水準にある。この8%という乖離率は実際の年初来の下落率17%より9%も小さく、現在の株価に対する印象が変わってくる。
2021年末で考えると、実際にはS&P500種株価指数は4,766ポイントであった。長期金利が1.5%と低位であったため、予想PERが21.6倍と高い値が許容されていた。もし、金融引締めが前倒しされていたら長期金利は2%程度まで上昇し、予想PERが19.5倍程度まで低下した可能性がある。実際に2022年3月中旬以降、長期金利は2%を上回り続け、予想PERは2月中旬以降19.5倍を下回り続けている。もし、長期金利、予想PERともに金融引締めが3カ月程度前倒しされていたなら、こうした状況は2021年末にでもあり得たであろう。
筆者の試算では、S&P500種株価指数は2021年末に4,300ポイントとなり、実際の値より10%程度低くなっている【図表2】。この4,300ポイントを基準にすると、4,000ポイントを下回っている現在のS&P500種株価指数は8%程度低い水準にある。この8%という乖離率は実際の年初来の下落率17%より9%も小さく、現在の株価に対する印象が変わってくる。
2021年末の値や史上最高値は取扱注意
上記の数値は、あくまでも筆者の試算であり、たらればの範疇を出ない。また、断っておくが米金融政策当局の当時の判断を批判しているわけでも、したいわけでもない。1年前はウクライナ侵攻を予測できないし、2022年にこれほどインフレになるとは考えられていなかった。また金融引き締めに転じられる経済情勢にもなっていなかったと思われる。実際に昨年のジャクソンホール会議から金融引き締めに転じた場合、経済情勢が現在より悪化し、株価が今以上に低迷していた可能性もある。
ただ、その一方で2021年末にかけて金融政策によって低金利下が続き、結果的に株価が吊り上がっていたことは確かである。早めに金融引締めに動いていれば、2021年年末の株高はありえなかったであろうし、S&P500種株価指数の史上最高値も昨年のジャクソンホール会議直前の2021年8月25日の4,496ポイントを更新できなかった可能性が高い。
つまり振り返ってみると2021年、特に年末にかけては、予想PERが21-22倍程度と平時よりはかなり高く、バブルとまでは言い過ぎだが、プチ・バブル状態だった可能性がある。ゆえに、S&P500種株価指数を考えるうえで2021年末の4,766ポイントや2022年1月3日に付けた史上最高値4,796ポイントを意識して、今後の動向を判断すると間違うかもしれない。少なくとも年初来もしくは史上最高値から〇〇%下落したからそろそろ下げ止まるとか、来年早々にはきっと反発するはずなどと感覚的に考えるのではなく、経済情勢なども良く見た上で判断する方が賢明だと思われる。
ただ、その一方で2021年末にかけて金融政策によって低金利下が続き、結果的に株価が吊り上がっていたことは確かである。早めに金融引締めに動いていれば、2021年年末の株高はありえなかったであろうし、S&P500種株価指数の史上最高値も昨年のジャクソンホール会議直前の2021年8月25日の4,496ポイントを更新できなかった可能性が高い。
つまり振り返ってみると2021年、特に年末にかけては、予想PERが21-22倍程度と平時よりはかなり高く、バブルとまでは言い過ぎだが、プチ・バブル状態だった可能性がある。ゆえに、S&P500種株価指数を考えるうえで2021年末の4,766ポイントや2022年1月3日に付けた史上最高値4,796ポイントを意識して、今後の動向を判断すると間違うかもしれない。少なくとも年初来もしくは史上最高値から〇〇%下落したからそろそろ下げ止まるとか、来年早々にはきっと反発するはずなどと感覚的に考えるのではなく、経済情勢なども良く見た上で判断する方が賢明だと思われる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年09月02日「研究員の眼」)

03-3512-1785
経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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