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日韓が最低賃金を引き上げ-引き上げ率は日本が3.3%、韓国が5%-
生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
一方、8月1日、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は2022年度の最低賃金(2022年10月ごろかた適用、時給)の目安を全国平均で961円にすると決めた。前年度からの引き上げ額31円(伸び率は3.3%)は2002年度に時給で示す現在の方式となってから過去最大である。
今まで韓国の最低賃金の引き上げ率は日本より高い水準を維持してきた。例えば、1990年から2023年までの最低賃金の対前年比引き上げ率の平均は、日本が2.0%であるのに対して韓国は8.6%であり、日本より4倍以上も高い。韓国の最低賃金の対前年比引き上げ率が日本を下回ったのは、文政権が最低賃金の大幅引き上げ政策の失敗を認めて決まった2020年のみである。
では、日韓の最低賃金はどれくらい縮まったのだろうか。ここでは日韓の為替レートを用いて韓国の最低賃金を円に直すことにより、日韓の最低賃金の水準を比較した。為替レートは1989年から2021年までは年平均を、そして2022年と2023年は日本で2022年の最低賃金が決まった8月2日の水準を適用した。
さらに、韓国では日本とは異なり最低賃金に加えて週休手当が支給されており、週休手当を含めると日本と韓国の最低賃金の格差はさらに広がる。週休手当とは、1週間の規定された勤務日数をすべて満たした労働者に支給される有給休暇手当のことである。韓国では一日3時間、週15時間以上働いた労働者には週休日に働かなくても、一日分の日当を支給することになっている。例えば、一日8時間、週5日勤務すると、計40時間分の賃金に週休手当8時間分が加わり、計48時間の賃金が支給される。
しかしながら、韓国が日本より最低賃金が高くなったと言っても、生活の満足度が日本より高いとは言えない。国連機関が3月18日に発表した「世界幸福度ランキング」2022年版によると、2022年における韓国の幸福度のランキングは世界59位で日本(54位)より低い。
韓国は日本より最低賃金や賃金の引き上げ率は高いものの、就業率や雇用の安定性が低い。一方、日本は最低賃金や賃金の引き上げ率は低いものの、就業率や雇用の安定性が高い。経済のグローバル化等により人材のグローバル化が進む中で日韓政府は雇用の安定性と賃金の引き上げのうち、どちらを優先する政策を実施すべきだろうか。日韓政府の今後の対策が注目される2。
1 実際に適用されるのは、韓国は2023年1月から、日本は2022年10月頃からであり、以下の日韓対比ではこれを2023年の数字とする。
2 本稿は、「日韓の最低賃金が逆転?-2022年は両国とも引き上げを決定-」ニッセイ基礎研究所研究員の眼 2021 年 7 月27日に掲載されたものを加筆・修正したものである。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=68354?site=nli

03-3512-1825
(2022年08月10日「研究員の眼」)
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